第2部 学力調査を活用した実践事例 [事例1]石川県かほく市立河北台中学校
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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課題解決型授業で生徒の意欲を引き出す

 取り組みのスタートに当たり、まずは各教科部会が学力調査の結果を細かく分析した。さまざまな課題が浮き彫りになったが、特に1年生はすべての教科で応用力の弱さが目立った。河北台中学校はその主因を基礎的な学習習慣や意欲をはじめとした「学びの基礎力」の不足にあると考えた。というのも「学習継続力」「学習のけじめ」「学習環境の整備」「学習に向かう姿勢」で構成される「学びを律する力」が低く、学力が育つ土台が築かれていない構図が明らかになったからだ。
  河北台中学校では更に、全生徒に対して「学習についてのアンケート」を実施し、家庭学習時間の不足や、読書量の減少、活力の不足、学習習慣の意識の甘さといった課題を次々と明らかにした。これらの克服に向けて、河北台中学校が着手したのが課題解決型授業の導入だ。大和先生がその狙いを説明する。
  「生徒が学習に対する意欲を持てない最大の原因は、教師から一方的に教える形の授業をしがちだったことにあると考えました。そこで、生徒の思考の流れに沿った『課題解決型』の授業展開を心がけることで、全教科においてわかりやすく、かつ意欲を引き出すことを目指しました」
  一口に「課題解決型授業」といっても、教師によって解釈はさまざまだ。そこで、05年度には教師全員がその手法を共有することに主眼を置いた。
  まずは、県教委から指導主事を招いて研修を行い、数学と社会で課題解決型の授業を実施。すべての教師が参観し、「課題解決型授業とは何か」を体感した。その上で全教科で研究授業を行い、教師間の共通理解を図っていった。この過程では、教師の発問に対する生徒の反応や、導入や課題提示の在り方、授業の進行方法、発言の引き出し方、次の授業へのつなげ方、評価方法といったさまざまな課題が提示された。大和先生がその経過を語る。
  「『生徒の思考の流れに沿った授業』は口で言うほど簡単ではなく、最初は教師が課題を設定して生徒に考えさせるという教師主導の授業が目立ちました。しかし、他教科の研究授業を参観し、共通理解が進むにつれて、無理のない展開を心がけた授業が見られるようになりました」
▼図1 実態把握から具体的な対策までの流れ
図1
県と市の学力調査(学習意識調査を含む)、および河北台中学校が独自に実施する「学習についてのアンケート」により、各学年の実態を把握。課題を洗い出し、具体的な対策に反映させている
 例えば、大和先生の担当の国語では、物語文であれば、あらすじや登場人物を把握させたあと、生徒に疑問に思った登場人物の言動や現象を発表させて、生徒自らが学習課題を設定することに重点を置く。学習の動機付けを行うためだ。その後の授業も、生徒自身が疑問を追究する流れで展開し、通常の授業であれば教師側が提示することの多い登場人物の心情なども新たな課題とし、生徒に考えさせる。こうした手法を丁寧に取り入れた結果、05年度末には生徒たちが意欲的に学ぶ姿が見られるようになってきた。
  また、単元の冒頭には「学習のめやす」(図2)を配付し、生徒に学習の見通しを持たせるようにした。この用紙は、単元の終了時に理解度や学習態度を自己評価させて回収している。生徒にとっては授業の振り返りの助けになり、教師にとっては生徒の実態把握に役立っているという。
▼図2 「学習のめやす」
図2
「学習のめやす」は単元ごとに作成し、授業の最初に配付。生徒は単元の終了時に自己評価を記入し、問題にも答えてから提出する。教師はコメントを記入して、生徒に返却する

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