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学習意識調査を小中で実施し「中1ギャップ」を洗い出す
学力調査と学習意識調査は05年3月に実施された。中学校は1、2年生、小学校は2~6年生が対象だ。
その結果、都跡中学校では、基礎的な計算力を伸ばしきれていない実態が明らかになった。その影響は理科にも波及し、生物分野の問題は解けていたのに、計算を含む化学や物理分野の問題の正答率が低かった。一方、国語は、漢字の「書き」の得点が低く、漢字力の弱さが明らかになった。
これらの原因を探るため、
都跡中学校では学習意識調査の分析を更に詳しく行った。小学校と中学校を個別に分析するだけでなく、両校の調査結果を並べてグラフ化し、小学校から中学校への移行による意識の変容を探ったのである。
すると、学年が上がるにつれ、目に見えて結果が悪化している項目が明らかになった(
図1
)。
「学年が上がるごとに特徴的な変化はあるだろうとは思っていましたが、これほどの顕著な変化が表れるとは、正直、予測していませんでした」(村尾先生)
▼図1 都跡小学校・都跡中学校の学習意識調査の結果
小学生から中学生にかけて、特に低下が目立つ項目を抽出。さまざまな項目で「中1ギャップ」が数値として示された(一部の設問は小2生には設定されていない)
とりわけ落ち込みが激しかった項目の一つが、「学習継続力」を示す「目標に向け、ふだんからこつこつ学習している」だ。この項目は小6生の約46%に対し、中1生は18%、中2生でも30%を下回っていた。小学校では、中学校に比べて「掛け算や割り算などの反復練習」を必要とする学習が多い。しかし、そうした学習内容の違いを考慮しても、都跡中学校の数値は低いと、都跡中学校の教師たちは考える。
「生徒の内訳を詳しく見ると、学力の低い子どもほど反復練習をしていませんでした。学力の高い子どもは自ら家庭で反復練習をしますが、低学力の子どもほどしていない。その構図が、更に学力差を広げる原因になっています。学校現場でこの点をどのようにフォローしていくかが難しい」(都跡中学校の職員研修での意見)
ほかにも、「学習計画力」を示す「めあてを決めて、授業や家で学習に取り組んでいる」、「学習スキル」を示す「テストで間違えた問題はやり直している」、「学校での指導活動」を示す「学習することが、どのように役立つか話し合う」などの項目で、小、中間の肯定的回答の差が目立っていた。
更に、村尾先生は、小学校と中学校のテストの違いにも原因があると分析する。
「小学校のテストは、範囲が狭く、回数が多いので、失敗しても挽(ばん)回はできます。しかし、中学校の定期テストは範囲が広く、問題数が多いため、得点を上げにくく、1回失敗するとなかなか挽回ができません。得点が序列化しやすいため、生徒の学習意欲も減退しやすいのです」
一方、生徒のつまずきの背景には、小中の学力観の違いもあると、加藤二三男校長は指摘する。
「小学校ではコミュニケーション能力や『生きる力』などの総合的な学力に重点が置かれますが、中学校では高校受験を控えていることもあり、どちらかといえば教科学力を重視する傾向にあります。そうした学力観の違いや指導スタイルの違いに戸惑う子どもが少なくないように見受けられます」
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