第2部 学力調査を活用した実践事例 [事例2]奈良県 奈良市立都跡中学校
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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朝の漢字プリント導入で反復練習を促す

 学力調査と学習意識調査の分析を基に、都跡中学校では対策について検討が進められた。その結果、「こつこつ」と学習する姿勢の欠如が、数学の計算力や国語の漢字力不足につながっていると判断し、反復練習の定着に優先的に取り組むことにした。
  とは言え、突然大量の反復練習を課せば、生徒の学習意欲が更に減退するおそれがある。そのため、当面は漢字の「書き」に焦点を絞ることになった。意見が分かれたのは、どの層の生徒に指導の重点を置くかという点だ。「平均を少し下回る子を引き上げるべき」「低学力層の底上げをした方がよい」など、さまざまな意見が交わされたが、最終的には人数が多いことを重視し、「平均よりもやや下」の層を中心に対策を立てることが決まった。また、低学力層の生徒には夏季休業などを利用し、個別指導に近い形態で補習を実施している。
  こうして05年度の3学期から導入したのが、毎日の朝読書の時間の5~10分を利用した漢字テストだ。市販のドリルなどを活用し小4と小6レベルの2種類の問題をプリントの表裏に刷り、どちらの問題を解くかは、生徒に選択させるようにした。解答後は自己採点し、間違えた問題は反復練習して、終わった生徒から読書に移る。単純な取り組みだが、生徒たちは予想以上に意欲的だと監督の教師たちは感じている。
  「驚いたことに、半数以上の生徒は、自主的に表裏の両方を解いていました。05年度の3学期は試行的に1、2年生で実施しましたが、生徒が意欲的に取り組んでいたため、今年度は全学年への導入を決めました」
  06年度は難易度の幅を広げるため、漢字検定の7~3級程度の問題を採用。設問一つひとつに何級レベルかを明記して、生徒が自分の力を把握し、同時に漢字検定に挑戦する意欲も自然に持てるようにした。
  一方、課題を抱える生徒にわかりやすい授業をするには、授業力の向上も不可欠。そこで、05年度からは教師同士がアドバイスを出し合いながら、互いの力量を高めていくことを狙い、教師間での「授業公開」をスタートさせた。授業者は前日までに扱う単元や授業の目当てを書いた用紙を配付し、「時間のある人は自由に来てください」と、参観を促す形にしている。授業後、参観した教師は感想や気付いたことを用紙に記入して授業者に渡す。
  「可動式の黒板の位置が低くて見えづらいなど、生徒の視点で見たアドバイスが受けられる利点があります。また、『展開が工夫され生徒が意欲的だった』『生徒の発言の取り上げ方が参考になった』などの感想は、教師のやる気にもつながります。実際に授業公開を行った教師からは好評でした」(村尾先生)
  また、都跡中学校では、できるだけ気軽な雰囲気の授業公開を心がける。
  「まずは互いに授業を見せ合うことに慣れるのが先決。無理なく続けるうちに、教師の意識が変わり授業の質の向上につながればと思っています」(加藤校長)
  05年度は年度途中から導入したため、授業公開をした教師は4人だったが、06年度は全員が実施する予定だ。

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