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個々の課題を浮き彫りにする「学習カウンセリング」
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以上のように、学力調査を活用しながら評価の信頼性を向上させてきたが、05年度にはレインボーチャートを軸にした更なる指導の改善が図られた。それが、「学習カウンセリング」だ。これは、学期末に生徒と国数社理英5教科の教師とが個別に面談し、レインボーチャートを基に現状の課題や今後の学習法を話し合う取り組みだ。
「チャートを渡すだけでは、生徒は十分に活用しきれません。チャートを基に課題を明確にして、どのような学習法によって克服していくのかを指導することが必要です。どうしても生徒は結果の悪い面に目がいきがちですから、良い面を褒めることで、意欲を引き出すことも同時に狙っています」(森山先生)
生徒へのアンケートでは、「先生と一対一で自分の良いところ、悪いところを言ってもらえてよかった」「具体的に何を頑張れば良いのか話してもらったのでよかった」など、肯定的な声が多く寄せられた(図4)。 |
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▼図4 レインボーチャートと学習カウンセリングの感想
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レインボーチャートに対する保護者の感想 |
<保護者>
・子どもとの話し合いでも材料が多く得られる
・提出物や忘れ物、ファイル、ノートなど子どもの様子がとてもよくわかる
・自己評価があるというのは自分を振り返るよい機会だと思う
・各教科を比べると好き嫌いがわかりやすくなる
・子どもが書く反省と感想を見ることができてよかった
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学習カウンセリングに対する生徒の感想 |
<生徒>
・一対一で自分の良いところ、悪いところを言ってもらえてよかった
・具体的に何を頑張れば良いか話してもらったのでよかった
・点が上がらない理由を教えてもらったので、次回は点が上がるような気がする
・今後のテスト勉強に役立つ
・ただレインボーチャートを見るだけよりもよかった
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レインボーチャートおよび学習カウンセリングについて、05年度、保護者と生徒に実施したアンケートでは、概ね肯定的な意見が寄せられた |
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こうした教師の手厚いサポートにより、生徒には、自分の課題をはっきりと認識し、その対策に取り組む学習態度がついてきた。その結果、全校的に学力調査の成績は徐々に上昇しているという。
教師にとっても、レインボーチャートによって個々の生徒の課題を視覚的に把握できるようになったのは、大きな利点だ。
「課題の傾向をタイプ別に分類することで、より適切な対策を練ることができるようになりました」(森山先生)
また、レインボーチャートの七つの観点への、評価項目の振り分けは、学期ごとに検討しているため、レインボーチャートは評価規準の見直しや充実にも役立っている。例えば、社会の「年号テスト」の結果は「3’rs・知識・理解・技能」と「関心・意欲・態度」の両方に入れ、生徒の学力を多面的に捉えて評価している。ほかにも「ワークシート」や「課題レポート」など、学習の狙いに応じて評価する観点のどこに加えるのかは、学期ごとに見直している。学期によっては、該当する活動のない観点をチャートから除いてしまう教科もある。こういった作業を学期の始まる前に行うことで、全校で学期の見通しを持った指導ができるようになった。
レインボーチャートを使った取り組みは、従来の通知表に比べて、教師の負担を増大させているような印象を受ける。しかし、実際には、評価の根拠となる資料を集め、それを基に数値を導くまでのプロセスは従来の通知表作成と変わりがなく、「伝え方」が異なるだけだと森山先生は説明する。
「教師がこのシステムに慣れるまでは、作業に時間を要したり、保護者や子どもへの説明を徹底したりする必要がありました。しかし今では、外部機関の協力によってコンピュータ入力の仕組みが整備されたこともあり、むしろ評価に要する労力は省力化されています」 |
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