▲お茶の水女子大教授 お茶の水女子大文教育学部長
耳塚寛明
Mimizuka Hiroaki
▲東京都台東区立御徒町台東中学校 校長
関本惠一
Sekimoto Keiichi
▲埼玉県ふじみ野市立福岡中学校 研究主任
山崎祐一
Yamazaki Yuichi
▲茨城県牛久市立牛久第一中学校 3学年副主任
本橋和久
Motohashi Kazuhisa
「第4回学習基本調査」では、家庭学習時間が上昇に転じる一方、成績上・中位層と下位層との二極化や受動的な学習姿勢の生徒の増加といった課題が明らかになった。こうした結果を現場の教師はどのように受け止め、どのように対処すべきなのだろうか。分析を担当したお茶の水女子大の耳塚寛明教授と、3人の中学校教師が語り合った。
耳塚 今回の「学習基本調査」では、これまでの傾向とは異なるいくつかの変化が表れています。「脱ゆとり」への転換の反映のように思えます。平均家庭学習時間が下げ止まり、上昇に転じました。また、授業の理解度についても、数学や理科において数値がアップしました。これらの結果を、先生方はどのようにお考えでしょうか。
関本 平均家庭学習時間を見て率直に感じた疑問は、「本当に生徒たちは、自主的に勉強するようになったといえるのだろうか」ということです。例えば、御徒町台東中では8割ほどの生徒が塾に通っていますが、今はどの地域でも中学生の塾通いが当たり前になっていますから、単に「塾の宿題に取り組んでいる分の時間が増えた」とも読み取れるわけです。 調査では「予習中心に勉強する生徒が減少して、復習中心に勉強する生徒が増加」という傾向も明らかになっていますが、これも復習というのは、もしかしたら塾の勉強の復習をしているのかもしれません。私が以前勤務していた中学校では、学校で塾の宿題をこなしている生徒がかなりいました。 また、「授業の理解度」についてですが、絶対評価が導入されて以来、生徒は自分の理解度や学力を客観的に把握しにくい状態になっています。それが、「自分は授業を理解している」という裏付けのない自信につながっているような気がします。
山崎 私も授業の理解度については、やや懐疑的な感想を抱いています。生徒の様子を見ていると、自己評価の基準が非常に曖昧です。教師から見て「授業をとてもよく理解している」と思われる生徒の自己評価が意外に低く、反対に「まだまだだろう」という生徒の自己評価が高かったりする。自己評価については、数値だけではなく、評価に取り組む生徒の姿勢まで分析しないと判断できないと思います。
本橋 生徒の自己評価の基準が曖昧なのは、生徒が自分で設定している目標がそれぞれ異なるからでしょう。成績上位層の生徒は「まだ自分はこんなものではない」という貪欲さがありますが、中・下位層の生徒は基本事項を理解できただけで満足感を得ることができる。こうしたことが、生徒間の自己評価のずれを生み出しているのではないでしょうか。