特集 「学びに向かう」生徒をどう育てるか?
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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学力が不十分な生徒を学習に向かわせるために

耳塚 先生方のお話をうかがってきて、現在、中学校では、どちらかといえば学力が身についていない層、あるいは学習習慣が定着していない層への手立てに力を入れていることがわかりました。ところが、家庭学習時間を見ると、成績の中・上位層の伸びが著しいのに対し、下位層はほぼ横ばいとなっています。つまり、学校の熱意が、まだ功を奏していない。下位層の学習意欲の向上や学習習慣の定着は、非常に難しい課題といえそうですね。

 

関本 私はやはり、家庭を巻き込んだ学習指導が鍵を握ると考えています。本校では、夏休みに全学年で三者面談を行い、1学期の通知表はその場で渡すようにしています。観点別評価に移行して以来、保護者は子どもの学習の状態を把握しにくくなっています。そこで、教師が「A君にはこういう学習に力を入れてほしいと思います」といった説明を、保護者を交えてするわけです。

 

本橋 下位層の生徒に対しては、基礎・基本の復習をさせるばかりでなく、ときにはあえてハードルの高い課題にチャレンジさせることも有効です。私の担当教科は英語ですが、先日、自分たちの住んでいる街をビデオカメラで撮影し、それに英語のナレーションをつけるという活動をしました。教科書の範囲を超えた英語力が必要となるため、英語の得意不得意にかかわらず、みんな同じように辞書を一生懸命引いて、ALTの指導を仰ぐという状況になりました。このとき、英語が苦手な生徒が「自分にもできるかもしれない」と、ALTに添削してもらった英文を必死に暗記し、本番に臨む姿が見られました。
  このように、下位層の生徒がほかの生徒と一緒になって、主体的に学習に参加できる機会をどれだけ設定できるかが、生徒の学習意欲向上のポイントになると実感しました。

 

山崎 クラスが持つ集団の力をプラスに作用させると、クラス全体の学力が大きく伸びるときがあります。生徒の間には、暗黙のうちに成績の序列ができているものですが、定期テストなどで成績下位の生徒が奮起して高得点を挙げたときに、固定化された関係が揺さぶられます。その瞬間を見逃さずに「よく頑張ったね」と褒めると、頑張った生徒はその達成感から、まわりの子は危機感から、学習意欲が高まります。学習に苦手意識を抱いている生徒も、成績上位の生徒も、一緒になって引っ張り上げることができるわけです。

 

耳塚 なるほど。そうした手法も有効ですね。一番大切なのは、個々の教師の優れた実践をほかの教師と共有し、継続できる仕組みをつくることではないでしょうか。よく学校は「ノコギリの刃」といわれ、1人の優秀な教師が生徒の学力を伸ばしても、その異動と共に元に戻ってしまうといった現象が起こりがちです。生徒の学習上の課題を解決するには、今まで以上に教師間の連携が重要になると思います。本日はありがとうございました。

本橋和久先生

茨城県 牛久市立牛久第一中学校
古くからの住民と転居してきた住民が混在する地域を校区に持つ。保護者の教育への関心は比較的高い。05年度より英語、国語、数学ではクラスを2つに分け、少人数指導を展開する。また、校舎は教科特別教室型となっており、教師は各教科の準備研究室で授業の準備や教材研究を行い、生徒は各教科の教室に移動して授業を受ける。

所在地 〒300-1211
茨城県牛久市柏田町1017-2
生徒数 652人
学級数 19学級
URL http://www.city.ushiku.ibaraki.jp/jhs
/ushiku1/index2.htm
山崎祐一先生

埼玉県 ふじみ野市立福岡中学校
ふじみ野市は都心から電車で約40分の東京のベッドタウン。多くの生徒は地元の公立高校への進学を希望しているが、最近は、いわゆる難関私立高校を希望する生徒も目立っている。02年度に文部科学省の「学力向上フロンティア事業」の指定を受け、05年度からは「学力向上拠点形成事業」の指定校となる。

所在地 〒356-0017
埼玉県ふじみ野市上野台3-3-1
生徒数 603人
学級数 18学級
URL http://www.fujimino.ed.jp/fchu/

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