地方分権時代の教育行政 福岡県北九州市
福岡県
北九州市立浅川中学校

1984年開校。九州工業大大学院や早稲田大大学院、研究機関などがある「学術研究都市」ゾーンに位置する。「自主・協同・信頼」の校訓の下、校区の小学校や市民センター、保護者など、地域との連携を深めている。

 

校長●酒井正治先生
児童数●759人
学級数●23学級
〒807-0871
福岡県北九州市八幡西区浅川学園台2-4-1
TEL 093-601-9323
FAX 093-601-3498
URL http://www.kita9.ed.
jp/asakawa-j/

酒井正治

▲北九州市立浅川中学校校長

酒井正治

Sakai Seiji

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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[実践事例]

福岡県 北九州市立浅川中学校

小学校のカリキュラムを見据え
中学校教師が小学生を指導

小・中学校間兼務で新入生の状況を把握

 生徒数759人の浅川中学校は、北九州市内で2番目に規模が大きい中学校だ。その校区にある三つの小学校のうちの一つ、光貞小学校の竹治あけみ校長から「音楽の指導をしていただけませんか」と、同中学校の酒井正治校長に申し出があったのは2006年5月のことだ。北九州市が進める事業「ティーチャーズ・ネット」を活用した中学校教師の小・中学校間兼務の要請である。その内容は、「11月に開かれる音楽会に向けて、6年生の合唱と演奏を指導してほしい」というものだった。酒井校長は早速、音楽科の教師2人に打診。両名の快諾を受け、小・中学校間兼務が実現した。
  中学校の音楽教師が光貞小学校で指導するのは、1学期に1回、2学期に2回の計3回。両校の担当教師が直接会って打ち合わせをすることが時間的に難しかったため、具体的な指導内容はファクスや電話でのやり取りで調整していった。
  「光貞小学校からの要望は、『校歌を合唱用にアレンジしたい』というものでした。そこで、まずファクスで小学校での音楽の指導計画と校歌の楽譜を送ってもらい、私たちがどのような指導をすべきか考えました。実際に編曲した校歌は、本校の合唱部の生徒たちに歌ってもらい、小学生向けのアレンジとして適切かどうかをチェックしました」(音楽科・花田佳子先生)
  こうした準備を踏まえた上で、1回目の指導では、児童たちの現状を把握し、基本的な歌唱・演奏法を指導した。2回目には効果的な表現の仕方などを指導し、仕上げとなる10月の3回目の授業では最終チェックを行った。
  「小学生にとって中学校の先生は遠い存在だったようですが、専門的な内容を教えてもらえるという喜びは大きかったようです。子どもたちはいきいきして、緊張感を持って授業を受けていました」(竹治校長)
  3回の指導を通して、合唱も演奏も格段にレベルアップしたという。中学校教師が1回だけの体験授業で教えるというのではなく、小学校の年間カリキュラムを見据えて段階的に指導した成果といえるだろう。
  「小学校のカリキュラムのどの部分を中学校の先生方に指導していただけば効果が上がるかを考え、授業の内容を調整していきました」(竹治校長)
  中学校の教師にとっても、校区の小学生を教えることには大きなメリットがあると、花田先生は話す。
  「小学生に直接教えることで、来年度入学してくる子どもたちが、小学校卒業時にどのくらいのことができるかを把握できます。特に、授業時間数が少ない音楽などの教科では、子どもたちが何を学んできたのか全くわからない状態から授業を始めるのに比べると、とてもプラスになると思います」
  酒井校長も小・中学校間兼務の効果について、「将来、本校に入学してくる子どもたちの様子や雰囲気を直接つかめるのが、大きなメリットです。小学生を教えることで、教師の指導の幅も広がるでしょう」と話す。

写真1
写真1 光貞小学校の6年生全員を相手に、校歌と『故郷』の合唱を指導する浅川中の音楽科教師、上原佳代子先生(左)と花田佳子先生(右)。「ドとシの音は近いから難しいよね。そこだけパートに分かれて発声してみようか」などと、中学校の教師ならではの技術的な指導を展開。小学校の教師たちは「中学校の先生の数少ない授業だから、1分でも大切に話を聴こうね」などと、授業を受ける心構えなどの点でサポートする
写真2
写真2 演奏曲はテレビ番組『情熱大陸』のテーマ曲。「ピアノの演奏が上手になったね」(上原先生)、「鳥肌が立つくらいよくなったよ」(花田先生)などと、2人の中学校教師は小学生を褒めながら指導していく。授業中、児童たちは私語もなく集中。授業後には個人的に指導してもらう熱心な児童の姿も見られた

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