安彦教授が指摘するように(P.2参照)、これからの小中連携を考える上では、生徒の成長に合わせていかにスムーズにカリキュラムを接続できるかがポイントになる。各地で進む小中連携の現状を整理すると共に、今後の課題についても押さえておく。
不登校生徒の増加など、中学校における「中1ギャップ」がクローズアップされるようになり、全国の多くの中学校が小中連携に本格的に取り組みつつある。生徒指導や安全管理にかかわる情報交換、小学生の体験入学、学校行事や授業の合同実施、更には小学校と協力して、9年間の連続性を見通したカリキュラム作成に着手する中学校も見られるようになってきた。 実際、文部科学省の研究開発学校や構造改革特区においても、「小中連携」あるいは「小中一貫」を掲げている学校は多い(巻末付録参照PDFファイル(2.6MB))。少なくとも、「小学校と中学校が協力して子どもを育てていくべきだ」という考えに反対する教師はいないだろう。 ただし、「小中連携」や「小中一貫」といった言葉が、必ずしも学校教育法などの法律で定義された用語ではないことには、注意が必要である。 例えば、P.9~13で紹介する東京都品川区立小中一貫校 日野学園は、一般に「施設一体型の小中一貫校」として知られているが、法制上はあくまでも「同じ校舎を共用している小学校と中学校」である。「小中一貫校」という新たな校種はなく、「小中『連携』が発展すると『一貫』になる」というような、明確な定義はない。 この点は、中学校と高校との連携に関して「中高一貫教育校」が法制化されていることと、大きく違うと言えるだろう。 そのため、「小中連携」「小中一貫」と言っても、その内容は実に多様である。「すべての教科で9年間を通したカリキュラムを作成している」という学校もあれば、「総合的な学習の時間(以下、総合学習)での連携」や「特定教科の連携を軸にしている」、あるいは「学校独自の教科を新設して、それを軸に連携を図っている」という学校までさまざまだ。実際、「一貫教育」を掲げている研究開発学校や構造改革特区の学校においても、全教科での連携を行っている学校となると、それほど多いわけではない。 自治体・学校単位での取り組みが、国の制度整備に先行しているのが、現在の小中連携の状況と言える。今後、地方分権が進むにつれ、地域の実態に即した小中連携・一貫教育がますます広がっていくだろう。