特集 カリキュラムから考える小中連携

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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低学年と接することで高学年が成長する

 昼休みなどの休み時間、日野学園では同じ敷地内にある小中一貫校ならではの光景が見られる。1年生や2年生が「お兄ちゃん、お姉ちゃん、遊ぼうよ」と、8年生や9年生の教室を訪ねてくるというのだ。
  日野学園では、この立地のメリットを生かし、さまざまな場面で異学年集団活動を取り入れている。入学式では、1年生が8、9年生に手を引かれながら体育館に入場してくる。部活動は5年生から参加でき、5年生から9年生までの5学年の子どもが一緒に活動している。更に、道徳と特別活動、「総合的な学習の時間」を融合させた独自教科の「市民科」では、集団や社会とかかわる力を身につけるために、異学年集団活動の場が設けられている。
  「本校には中学生に当たる学年の子どもの中に、いわゆる突っ張ったような感じの生徒がほとんどいません。この年代の子どもは、大人に対して反発を覚えて反抗したがるものです。しかし、小さな子どもがそばにいることで自然と模範になる行動をして、校内でも『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』として振る舞っています。
  昔の子どもの群れ遊びと同じように、自分よりも年下の子どもの面倒を見る中で、上の子どもが成長していく。年齢が大きく離れた子ども同士が、小中一貫校という同じ空間で学んでいることの一番の効果は、実はそこにあるのではないかと感じています」
  思春期に入った子どもは、自尊感情が大きく低下する。しかし、そうした思春期の子どもが、年下の子どもを支えながら一緒に活動し、「自分はまわりの人たちの役に立っている」と思えるようになることで自尊感情を回復していく現象は、広島県呉市の小中一貫教育の取り組みの中でも確認されている。
  中学生が抱えがちな自己と社会に対する不安感や、それに伴って起きる問題行動や学校不適応などの問題を解消するためのヒントは、小学生との異学年集団活動にあるのかもしれない。
  小中一貫校で行われている実践は、「特殊な学校だからできること」といったイメージで捉えられがちだ。しかし、小学校と中学校の学びの連続性を確保することが大きな課題となっている今、従来型の学校でも小中一貫校の取り組みから吸収すべきことは、少なくないはずだ。


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