指導変革の軌跡 生徒の自律性を育てる取り組みで学校の「荒れ」に立ち向かう

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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日刊の生徒会新聞で互いの良さに目を向ける

 短期間で生徒の自主活動が盛り上がっていった背景には、荒れの真っ只中でも生徒会の求心力が失われなかったことが大きいようだ。中でも、日刊の生徒会新聞「輝け!八中 みんなの学校」図1)は、生徒同士のコミュニケーションを陰で支える重要な役割を担ってきた。
▼図1 日刊の生徒会新聞「輝け!八中 みんなの学校」
図1
「輝け!八中 みんなの学校」の紙面。この新聞を作りたくて、生徒会執行部に入部を希望する生徒も多い
  この新聞の創刊は85年。ちょうど校内が最も荒れていた時期だった。当時、八幡中学校に教師として赴任していた奥井和義校長は、創刊の経緯をこう振り返る。
  「荒れた校内を変えようと、ある教師が創刊を提案しました。それが生徒会執行部に引き継がれて、現在に至っています。当時は、新聞に関心の低い生徒が多く、廊下などに捨てられていたこともありました。それでも、創刊以来、登校日には休むことなく発行し、07年2月6日にはついに5000号を迎えました。今では『八幡中の文化』と呼べるものになっています」
  記事は主に学校での出来事で、どんな内容を書くかは生徒に任されている。発行前には教師が目を通すが、個人攻撃となる記事、トラブルを招くおそれのある記事でない限り、手直しはめったにしない。校内の問題を取り上げることもあるが、むしろ教師たちが大切だと感じるのは、「Aさんが学校に花を持ってきた」「Bさんが部の大会で活躍した」など、クラスメイトの「小さなことではあるが、良いこと」を全校に発信している点だ。
  「新聞に名前が載ると、『だれかが自分のことを見ていてくれる』という意識が芽生え、自己肯定感が育まれます。それが『また良いことをしたい』という気持ちを生みますし、生徒が疎外されるのを防ぐことにもなっていると感じます」(竹端先生)
  今は「自分も書きたい」と申し出る生徒が多く、生徒会執行部の人気は高い。現在は23人の部員が日替わりで制作している。
  こうした活動はあくまでも生徒主体で進められているが、教師との頻繁な打ち合わせは欠かせない。そこで、八幡中学校はあるユニークなシステムを採用している。3階に分かれた各学年のフロアに空き教室を一室、教師用の部屋として確保し、教師は授業以外の時間は、そこで仕事を進めているのだ。各学年ともすべての学級を見渡せる教室を使っているため、生徒の様子を把握しやすいというメリットがある。
  「実は、これは、学校が最も荒れていた時期に、問題を起こした生徒にすぐ対応できるように用意された部屋でした。今では生徒との交流の場として、生徒会執行部や学年生徒会との打ち合わせに活用しています。この部屋があることで、生徒との距離が縮まっていると思います」(竹端先生)

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