指導変革の軌跡 生徒の自律性を育てる取り組みで学校の「荒れ」に立ち向かう

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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キャリア教育で地域の信頼を取り戻す

 地域社会との連携も、生徒を大きく変えつつある。八幡中学校の校区には多くの卒業生が暮らし、元々地域とのつながりは弱くはなかった。ただ、荒れる学校を目の当たりにして、不信感を抱く住民も多かったという。そのイメージを取り除くことが目標の一つとなった。
  「地域からの厳しい目は、『我が町の学校』という強い意識の裏返しだったと思います。生徒が抱える課題を解決するには、学校だけではなく、地域全体からのアプローチが欠かせません。そこで、地域社会の協力を得る方法を模索してきました」(奥井校長)
  04年度に文部科学省のキャリア教育推進地域指定事業の対象校となったのを機に、以前から取り組んできた「生産労働体験学習」を発展させて、1年生は「ものづくり体験学習」、2年生は「職場体験学習」(写真4)、3年生は「ボランティア体験学習」と、全学年の生徒が地域社会に入って体験活動を実施することにした。
  体験学習前には、受け入れ先で問題を起こさないかと心配したが、それは杞(き)憂だったと竹端先生は喜ぶ。
  「普段は落ち着きのない生徒が嬉しそうに牛の世話をするなど、学校とは異なる表情を見せる場面もたびたび見られました。地域社会の持つ教育力を再認識しました」

写真4
写真4 2年生の職場体験学習の様子。地元の農家で農作業を体験した。職業観を育成するだけでなく、地域の人々と触れ合う、重要な機会となっている

  介護施設を訪れた3年生の中には、体験終了後にもボランティアを続ける生徒がいた。一方、地域住民にも「学校と一緒に生徒を見守ろう」という意識が強まり、教師が地域別懇談会などに出席すると、「最近、八中の生徒はきちんと挨拶できるようになったよ」など、生徒の変化を認めてくれるようになった。
  その活動を通じて最初に変わったのは、実は教師だった、と古武正思教頭は振り返る。
  「生徒の受け入れをお願いするために、市内の農業組合や事業所、福祉施設などを訪れるうちに、教師と地域住民との交流が進みました。そのとき初めて、今まで学校が地域に目を向けていなかったことに気づいたのです。以後、職員室では『こんな人がいた』『あんな店があった』など、地域のことが話題に上る機会が増えました」
  保護者からの評価も高い。体験後の保護者アンケートでは、「人と会ったら挨拶するようになりました」「『疲れた』と音を上げるかと思っていたら、3日間を通して『面白かった』と言っていたので驚きました」「働くことの大変さを少しは体で感じてくれたと思います。野菜が苦手で普段は食べませんが、訪問先でいただいた野菜は喜んで食べていました」など、前向きな声が数多く聞かれた。


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