特集 生徒が変わる「キャリア教育」

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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人生を切りひらいていく力を「体験」を通して育てる

 職業だけでなく、生活も含めて一人前の大人になるための基本を幅広く養うこと。これがキャリア教育だと、私は考えます。そこには二つの面があります。一つは、どのような職種を選び、生きていくかという進路指導のガイダンス的な面。もう一つは、コミュニケーション能力などの基本的な就業能力を、体験を通して育成する面です。
 進路指導のガイダンスだけで自分がしたいものは何かを考えていくと、例えば「歌手になりたい」という夢を抱くだけで終わってしまいます。しかし、現実の社会の中で職業を選んでいくためには、自分の能力も考えなければなりません。「体験」を通して、自己理解を深めることは、だからこそ大切なのです。
 若年労働市場が悪化し、ニートやフリーターが増加したことが、国が若者対策に乗り出した背景にあります。このため、キャリア教育は「ニート・フリーター対策」「職業観の醸成」という意味だけで捉えられてしまっているかもしれません。しかし、キャリア教育はそれで終わるものではないのです。
 ニートやフリーター、高校中退にどのようなリスクがあるかを、子どもに伝えていくべきだと思います。しかし、将来の目標によってはあえてフリーターを選ぶ道もあるでしょう。例えば、「この時期にはアルバイトをしてでも俳優になる夢を追いかける」と、自分の中で時期を設定することはあってもよいと思います。今は大学新卒の就職が売り手市場に転じ、フリーターが減少傾向ですが、将来どうなるかはわかりません。大切なのは、どのような状況に置かれても自分の責任で人生を選択し、切りひらいていける力を養うこと(=エンパワー)なのです。

図2
グラフは、厚生労働省「平成18年版 労働経済の分析」より作成。(フリーター人数は、1997年は「平成17年版 労働経済の分析」より転記。 2002年以降については、総務省統計局「労働力調査(詳細結果)」より。若年無業者数は、総務省統計局「労働力調査」より)

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