▲藤川大祐
Fujikawa Daisukeふじかわ・だいすけ◎千葉大教育学部准教授(教育方法学、授業実践開発)。NPO法人企業教育研究会理事長、NPO法人芸術家と子どもたち理事。『「確かな学力」が育つ 企業とつくる授業』『企業とつくるキャリア教育』(いずれも教育同人社)などの編著書がある。
NPO法人を立ち上げ、企業と連携した授業づくりを進める千葉大教育学部の藤川大祐准教授は、キャリア教育は生徒の学習意欲の向上や地域との連携にも有効だと語る。
これまでの日本社会では、受験が学習の大きな動機付けの一つになっていました。ところが、少子化や雇用環境の変化で、良い学校に入り、良い会社に就職できれば幸せになれるという保証はなくなりました。受験を動機付けに子どもを学習に向かわせるのは、難しくなっています。 また、今までの学校教育においては、自分自身の幸せのために学ぶことが強調されてきました。しかし、多くの社会人は、自己実現のためだけに働いているわけではありません。お客様に喜んでもらったり、社会に貢献したりすることもまた、大きなやりがいになっています。キャリア教育を通して、「将来、他者や社会に役立つ人になるために学んでいるんだ」という意識を養うことが、子どもの学習意欲向上につながると考えています。 一方、授業で学んでいることが、社会に出たときにどう役立つのかを伝えることも大切です。例えば、私たちのNPOはゲーム会社と一緒に中学校の授業づくりに取り組んでいます。実はゲームには関数が応用されていて、キャラクターの直線的な動きなら一次関数、投げた物が放物線を描いて落ちてくるなら二次関数、くねくね動くなら三角関数が使われています。「こういう状況を満たす式を書いてごらん」と問いかけると、無味乾燥な数学だと興味を示さないような生徒でも喜んで取り組みます。 ただ、社会人に教科内容と仕事とのつながりを語ってもらおうとするのは、難しいでしょう。教師が、教科内容とさまざまな仕事との関連性を研究し、NPOなどのコーディネート組織と連携することも時には必要です。