特集 生徒が変わる「キャリア教育」
千葉県  多古町立多古中学校

千葉県 多古町立多古中学校

多古町は千葉県北東に位置する農業が盛んな町。2006年度にはキャリア教育の成果を認められ、多古町立多古第一小学校、千葉県立多古高等学校と共に「キャリア教育文部科学大臣表彰」を受けた。

校長●高橋 進先生

児童数●497名

学級数●17学級(うち特別支援学級2)

所在地●〒289-2241 千葉県香取郡多古町多古2920

TEL●0479-76-5261

FAX●0479-76-5262


高橋 進

▲多古町立多古中学校校長

高橋 進
Takahashi Susumu
鈴木 剛

▲多古町立多古中学校

鈴木 剛
Suzuki Takeshi
教務主任。社会科担当
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例3】

「大人との触れ合い」で荒れを克服、学習意欲も向上

千葉県 多古(たこ)町立多古中学校

生徒の「荒れ」をきっかけとした地域ぐるみの教育活動を基に、キャリア教育に着手した多古町。職場体験学習や地域の人々とのさまざまな交流活動によって、生徒の学習意欲が向上し、学校と地域との一体感が現れ始めている。

職場体験が学校の「荒れ」を鎮める

 多古中学校がキャリア教育に本格的に着手したのは2004年度のこと。多古町が文部科学省のキャリア教育推進地域指定事業に指定されたのがきっかけだ。
 7、8年前、同町は中高生の「荒れ」に悩んでいた。同校は教師の努力だけでは限界があると、PTAや教育委員会、関係団体、地元企業に呼びかけ、地域と連携して学校の立て直しを図った。00年度から職場体験を中心に、地域が積極的に中高生とかかわる機会を設け、地域の大人に叱られたり、褒められたりする体験を重ねることで、生徒達は落ち着きを取り戻した。同町が推進地域となったのは、こうした経緯と無関係ではない。
 ただ、課題もあった。教務主任の鈴木剛先生は、「自ら立てた目標に向かって積極的に取り組む主体性や、学ぶ力やコミュニケーションの基礎となる『読む、書く、聴く、話す』力の育成では、弱さがありました」と指摘する。生徒の目的意識を高めると同時に、基礎力を育成することが、次の目標となっていた。
 同校は、事業の指定を課題克服の好機と捉え、従来の取り組みを整理し、3年間の流れを体系化した。キーワードは7、8年前にも功を奏した「大人との触れ合い」だ。地域の人と中学生が合同で部活動を楽しむ「おやじも出番セミナー」、書道や華道などの文化を学ぶ「道セミナー」、町の行事の「あじさい祭り」に生徒全員が参加して会場の清掃や販売を行うなど、学校教育と地域の活動の融合を図っていったのだ。
 中でも重視したのは、1、2年生で実施する「職場体験学習」と「人セミナー」だ。職場体験は、1年生2日間、2年生3日間で、それぞれ40以上の事業所で実施する。特徴は、訪れる事業所がすべて多古町内であること。
 「地域外も含めて幅広く訪問先を探す方法もありますが、本校は職種にはあまりこだわりません。むしろ、人の役に立つことの大切さなど、どんな職場でも必要な価値を身につけることを重視しています」(鈴木先生)
 「人セミナー」では、地域で働く大人や高校生をゲストティーチャーとして、将来の夢や働く意義、20年後の多古町などについて語り合う(図1)。1クラスを2、3グループに分け、各1、2名のゲストティーチャーを招く。
図1
「人セミナー」は、職場体験の事前・事後学習として、年間を通して保護者や地域の方に関わってい ただく活動としている
 「人セミナー」は職場体験の事前・事後指導として位置づけ、個々の取り組みを単発に終わらせないようにする。職場体験後には報告会を設け、生徒が職場体験を通して学んだこと、感じたことを発表し、ゲストティーチャーから講評を受ける。
 高橋進校長は、「地域の人から『挨拶ができたのは偉かったね』『時間はしっかり守らないとだめだよ』とアドバイスしてもらうことで、生徒は自分の成長を感じ、また足りなかった点を自覚します。体験を通して生徒の心を育てて、勤労観や学習意欲につなげることが大切です」と、述べる。

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