特集 生徒が変わる「キャリア教育」

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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体験学習の反省を踏まえて授業内容をアレンジ

 同校は、職場体験の反省を普段の指導の中でも生かしている。職場体験で挨拶がうまくできなかった学年では、授業での挨拶や話し合い活動、職員室の出入りの際の言葉遣いや礼儀などの指導に力を入れる。
 「キャリア教育=職場体験ではありません。学校生活全体の中で、社会で通用するマナーやコミュニケーション能力を育てることこそ重要です。教科学習ではキャリア教育の4能力領域と各教科を関連付けた学習計画を作成し、社会で通用する力を育成しています(図1)」(今口先生)
図1
文部科学省が提案する4能力領域と各教科等の目標の関連を示したもの。キャリア教育が学校教育全体で進め られるものであることを教師が意識する手助けとなっている
 全校生徒100名強の小規模校だけに、教師の情報交換はスムーズだ。学年の枠を超え、生徒一人ひとりについて頻繁に意見を交わす。
 「コミュニケーションがうまくできなかったようだから、今度の授業では話し合いをさせてみよう、といった会話が自然にできます。この点は小規模校のメリットです」(今口先生)
 中3では、高校の進路指導担当教師による講演を年に数回開き、高校の教育内容や高校卒業後の進路について話してもらう。
 「生徒は当初、キャリア教育の目的は就職だと思うようですが、どの高校の先生も『夢の実現のために、これからステップアップしていくんだよ』と、話します。これが生徒に大きなインパクトを与えています」(今口先生)
 数年前に比べ、大学進学を目標に掲げる生徒が増えていることからも、その効果がうかがえる。同様に、仁摩小学校との連携が進んだことで、新入生の姿が変わった。
 「マナーの良さや黙々と作業をこなす姿勢が以前の新入生とは大きく違います。2、3年生にも、勉強や部活、きちんとした挨拶などが自分の将来につながっているという意識が、根付いてきています」(今口先生)
 教師の意識も変化している。「『フリーター』という生き方を頭から否定して良いのか…」と、キャリア教育を始めて1年ほど経ったころから教師の間で議論されるようになった。
 「ニートやフリーターはだめだという意識が、生徒に根付いてほしいと考えていました。しかし、今の社会状況を考えると、夢を実現させる過程で、一時的にフリーターにならざるをえない状況もあります。生活の実態やリスクを教えることはもちろん大事ですが、フリーターを『情けない生き方』と思わせるのは、私たちが目指すキャリア教育の姿ではないと考えるようになりました」
 「キャリア教育の視点なら」「キャリア教育に置き換えると」――。職員室では、そんな言葉が頻繁に交わされるようになった。指導のさまざまな場面で「社会に出て通用するのか」という問題意識が芽生えている。

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