学びが深まるICT活用 基礎スキルの教育を徹底し教科の授業にも多彩に活用

香川県 綾川町立綾南中学校

香川県 綾川町立綾南中学校

綾川町は県中央部に位置し、菅原道真ゆかりの地として知られる。伝統的に学校に対して協力的な土地柄で、綾南中学校でも地域を知る活動に力を入れている。部活動が盛んで、バドミントンやハンドボールは全国レベルの強豪校である。

校長●中井博雄先生

児童数●573名

学級数●17学級(うち特別支援学級2)

所在地●〒761-2103 香川県綾歌郡綾川町陶5593-1

TEL●087-876-1187

FAX●087-876-4719

URL●http://www.town.
ayagawa.kagawa.jp/ed/ryonan-j/


長尾信一

▲綾川町立綾南中学校教頭

長尾信一
Nagao Shinichi
美術担当
松尾行晴

▲綾川町立綾南中学校

松尾行晴
Matsuo Yukiharu
理科、「総合的な学習の時間」担当
渡邊広規

▲綾川町立綾南中学校

渡邊広規
Watanabe Hiroki
技術・情報担当
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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学びが深まるICT活用

基礎スキルの教育を徹底し教科の授業にも多彩に活用

香川県
綾川町立綾南中学校

総合学習と技術で補完し合い、系統的なICT教育を実現

 綾南中学校では、2005年度にICT環境を一新した。この年はパソコン機器等のリースの更新時期に当たったため、ICT指導の中心となる松尾行晴先生、渡邊広規先生らが校内の意見を取りまとめて、パソコン機器等に関する具体的要望を町に提出した。
 要望には、「文字入力・文書作成」「調べ学習」という二つの技能を身につけさせるための最低限の環境を整えたい、というビジョンがあった。そのためにそろえられたのは、ワープロや表計算などのビジネスソフトと、高速ネットワーク環境だ。同時期に、ベネッセコーポレーションのスクールイントラパックとICTサポートも導入し、現在のようなICT活用の体制が整った。
 同校では、これらを利用したICT教育を、技術・家庭科(以下、技術)と「総合的な学習の時間(以下、「総合学習」)」を利用して行っている(実録e授業参照)。
 「総合学習」では、調べ学習や発表の基礎的な技能について教え、1年生から3年生にかけて、系統的に指導する。
 まず、1年生では、「調べ学習のための技術を身につけよう」というコースを設定。アポイントメントの取り方やインタビューの仕方、インターネットでの検索の方法やネチケットなど、調べ学習に必要な基礎的なICTスキルを習得する。その後、プレゼンテーションソフトの使い方を学び、調べ学習の成果を実際に発表する。
 2年生では、キャリア教育の中に適宜、調べ学習を取り入れる。
 3年生では、国際理解や進路学習に関連し、生徒が各自でテーマを設定して調べ学習を行う。12月には発表会を開き、全校生徒と保護者の前で調べた結果をプレゼンテーションする。
 このように、1年生での取り組みは3年間の基礎となるため、特に力を入れて指導する。中でも重視するのは、ネチケットの学習だ。
 「校内のコンピュータにはフィルタリングソフトを入れているので、掲示板や有害サイトにはアクセスできないようになっています。ただし、家庭でそのようなソフトを入れていないパソコンを既に使っている生徒もいます。トラブルを未然に防ぐためにも、重点的に指導しています」(松尾先生)  ネチケットの指導で活用するのは、スクールイントラパックの掲示板機能だ。まずは、生徒に匿名でのチャットを体験させ、好きな内容を掲示板に書き込ませる。その後、書き込みが一段落したところを見計らい、教師が掲示板の設定を変更。一気に生徒の名前が表示されるようにする。  「インターネット上はいつも匿名だと思っている生徒が多いのですが、実際には設定を変えることで、管理者が個人を特定できることもあります。こうした経験を通して、名前が出ていないからと不用意に書き込みをすることの怖さや、発言への責任の必要性を体験させるのです」(松尾先生)
 一方、渡邊先生が担当する技術の授業では、表計算ソフトを使ったグラフ作成など、ビジネスソフトの基本的な使い方を教える。その際に心がけているのは、「生活と密着させること」だという。
 「架空の数字でグラフを作ったとしても、生徒にはなかなかピンときません。しかし、例えば、自分のスポーツテストの結果を使えば、自分だけの表を作ることができ、ぐっと身近に感じられます。ちょっと工夫することで、生徒の関心は高まり、やる気を出します。これまでも、キャリア教育の一環として、自分が興味を持った職業の生涯賃金をシミュレーションさせるなど、身近な数値を使うようにしてきました」
 また、技術の授業と「総合学習」とで内容を相互に補完し合う
 「技術の授業だけでは教えきれない部分もあります。例えば、プレゼンテーションソフトを使った発表やネチケットなどは、『総合学習』で指導しています。逆に、『総合学習』で身につけたスキルを踏まえて、技術の授業を行うこともあります」(渡邊先生)
 同校のインフラは、学校の明確な指導目的があった上で整えられた。中心となる教師が具体的な要望を挙げたことが功を奏した。そのため、導入したばかりでも教師の戸惑いは少なく、早い段階から系統的なカリキュラムをつくることができた。
 また、「総合学習」と技術とが連携し、スキル教育を分担していることで、無理のない、効率的な授業運営が可能になったといえる。
図1

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