「どうせ先生たちは俺たちの話を聞いてくれない、わかってくれない」
生徒と向き合い始めて、聞こえてきたのはそんな心の声だった。
「そこで生徒の言葉にじっくり耳を傾けてみることにしました。生徒の主張のうちの9割は、社会では通用しない自分本位なものでしょう。しかし、残り1割は『これは耳を傾けなければならない』という話が出てくるものです。それを受け止めるようにしていきました」(間邉校長)
「俺が一生懸命に訴えているのに、あのセン公がシカトしたんだよ」
「それはまずかったね。君は話をちゃんと聞いてほしいと思っているの?」
「そうだよ」
「今度、その先生と話す場を設定するからさ、きちんと言ってごらん」
課題のある生徒と教師が膝を交えての対話を繰り返した。すると、「この先生は自分の話をちゃんと聞いてくれる」という生徒の思いと、「話せばわかるじゃないか」という教師の思いとが、少しずつ交わるようになっていった。
「生徒は、ほかの人がいると絶対に本音を話そうとはしません。話は1人ずつ聞くようにしました。また、『なぜ授業に出ないのか』というような、単に生徒を追い詰めるだけの言葉は決して口にしませんでした。そのうち、家庭の事情について話し始める生徒も出てくるようになりました」(間邉校長)
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