指導変革の軌跡 「特別支援チーム」を結成し、教師個人の力に頼らぬ生徒指導を実施

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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例外なき断固たる対応で生徒から信頼を得る

 同校は学校全体が荒れていたわけではない。一部の生徒が授業を抜け出すだけで、授業自体は成立していた。また、教育相談は4月、9月、1月と年3回実施し、うち2回は生徒が相談する教師を自由に選べるようにしていた。生徒はあらかじめ相談事項を記入しておいた「相談カード」を、希望する教師に提出するしくみだ。さらに、保護者も含めた三者面談も7月、10月に実施している。
 このように生徒をきめ細かくサポートする体制は充実していたが、一般の生徒も「教師を信頼している」とは言い難い状況だった。先生に言っても、どうせ何もしてくれない・・そんな雰囲気が学校全体に漂っていたという。
 例えば、ある日、校舎の窓ガラスが割られるという事件が起きた。原因を調べるにあたり、だれかが割っている場面を目撃しているはずだと生徒に情報提供を呼びかけたが、報告する生徒は1人も出てこなかったのだ。
 「教師を信頼していないから、生徒は仕返しを恐れて申し出られないのではないか」という問題が浮かび上がってきた。課題を持つ生徒だけでなく、一般の生徒からの信頼も失っていることは、学校にとって大きなショックだった。
 「とにかく先生はきちんと対応するから、何か知っていたら教えてほしい」
 教師は生徒に訴え続けた。そうして半年経ったころ、変化が現れた。校舎の窓ガラスが立て続けに割られる事件が再び起きたが、生徒からすぐに情報が入ってきたのだ。教師は生徒に伝えていた通り、きちんとした対応をとった。何度もガラスを割った生徒に対して、学校は毅然とした態度で、警察に被害届けを出した。
 「『学校なんだから、これくらいやっても大丈夫』という甘えが生徒にはあるでしょう。しかし、社会で認められないことは、学校の中でも認められないということを伝えるのが、生徒指導で最も大事なことだと私は思います。生徒と日々接しているために情が移ってしまい、悪いことをしても大目に見てしまうということがあるかもしれません。しかし、本校では『良いものは良い』『だめなものはだめ』という線引きを明確にして、例外をつくらないようにしました。その結果、生徒の間に『先生はどんなことにもきちんと対処してくれる』という信頼感が生まれてきたようです。今では何か事件が起きてもすぐ情報が入ってきますし、何より生徒の表情が柔らかくなっていきました」(間邉校長)

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