指導変革の軌跡 「特別支援チーム」を結成し、教師個人の力に頼らぬ生徒指導を実施

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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担任を組織ぐるみで支える「特別支援チーム」

 「生徒一人ひとりの状況に応じた支援策を考える会議を開いて、生徒に合った指導の方向性を決め、それを検証しながら対応していくチームをつくってはどうだろう」
 そんな生徒指導専任教師の提案を受けて、06年4月、校長と副校長、生徒指導専任教師、特別支援教育コーディネーター(※1)、各学年主任、スクールカウンセラーで構成する「特別支援チーム」が発足した。狙いは二つある。一つは、不登校の生徒や不適応と思われる生徒など、課題を抱えた生徒をよりきめ細かく支援すること。もう一つは、学級担任のバックアップだ。
 「担任1人にすべてを背負わせるのではなく、学校全体で情報を共有し、問題に向き合っていくという、担任が安心して指導できる体制を目指しました」(間邉校長)
 5月中旬、まず実態の把握から始めた。担任は特別な生徒指導やケアが必要な生徒がどの程度いるのかを調べ、課題を抱えている生徒について「支援シート」(図1)を作成した。1年生については、校区内四つの小学校に毎年ヒアリング調査を実施しているため、生徒が入学前に通っていた小学校からの結果を記入した。

図1
支援シートは生徒の様子、経歴を11項目に渡って詳細に記入する。問題を起こしたときだけではなく、総合的かつ客観的に生徒を見つめるのに役立つという
*図は編集部で作成した例
 06年度は、個別支援を必要とする生徒36人分(3学年合計)のシートが集まった。特別支援チームは、これら一人ひとりについて時間をかけて検討。担任だけで対応が可能と判断された場合を除いた24人の生徒を支援対象とし、具体的な支援方針を相談することにした。
 支援方針を決めたあとも、特別支援チームは定期的に会議を開き、途中経過を踏まえて支援シートを見直した。問題が起きたときには、その生徒とかかわりのあるメンバーが集まり、担任と連携しながら対処している。また、支援シートは校長室に保管し、どの教師も閲覧できるようにしている。
 保護者への対応も、担任1人に任せきりにはしない。必要に応じて同チームのメンバーが担任と一緒に保護者の話を直接聞き、学校の方針を理解してもらえるように努めた。
 場合によっては、校長が自ら話す。間邉校長は、「我が子が大切だと思うのは、どの保護者も同じです。しかし、まわりの人たちの大切さに目を向けない保護者が増えてきたと感じています」と指摘する。例えば、仲良しグループの中のある生徒がトラブルを起こしたときに、グループからその生徒さえいなくなればよい、という考え方をする保護者が少なくないという。
 「問題を起こした生徒が良くなれば、ほかのメンバーも含めて集団全体がもっと良くなるという視点が希薄になってきていると感じます。悪い部分を取り除くという外科的処方ではなく、教育という漢方で心を治していくという考え方を私は大事にしています。そうした考え方を時間がかかっても保護者に伝え、理解してもらいたいと思っています」(間邉校長)
※1 横浜市が市内各校に配置している、窓口の役割となる担当者。特別な教育ニーズを持つ子どもや保護者と学校の調整や連絡を行う

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