特集1:生徒指導:つながり、深める「部活」指導
古賀正義

▲こが・まさよし◎筑波大大学院教育学研究科修了後、宮城教育大助教授等を経て2003年より現職。専門は教育社会学。主な研究分野は、学校組織文化、学級運営など。編著書に『〈子ども問題〉からみた学校世界』『学校のエスノグラフィー』『《教師》という仕事=ワーク』(共編著)などがある。

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【インタビュー】 今後の「部活」指導

グローバル社会に向けて
部活動の意義を今こそ問い直す


中央大文学部人文社会学科教育学専攻教授 古賀正義

部活動は教科学習とは異なる良さがある。それは、生徒にとって努力の成果が比較的見えやすく、喜びを感じられやすいこと――と話す中央大の古賀正義教授。
よりよい部活動指導のポイントと、中学校教育における今後の部活動の在り方をうかがった。

部活動は広い意味でのキャリア教育

 高校や大学の推薦入試の面接では、多くの生徒が勉学と共に部活動の話をします。学校の中で部活動がいかに大きな柱かがうかがえます。
 教科学習とは異なる部活動の良さは、「スモールステップ」が見えやすい点です。教科学習は、定期テストや入試といった長期的な目標に向かって取り組みます。一方、部活動は、例えば陸上部の場合、タイムが縮まった、高く飛べたなど、努力の結果が比較的すぐわかります。中学生は自分の喜びや成果を素直に周囲に言うのをためらう世代です。いつも生徒を見守っている教師が、その小さな「できる」をきちんと見つけ、言葉にして褒めることで、生徒は達成感を味わえます。教師にとっても、教室外で生徒との交流を深める絶好の機会です。また、大会などの結果自体は便宜的なものですが、それを喜びやくやしさ、友人関係の深まりといった有機的なものに変えられるのが部活動です。
 社会に出ると、利害が伴い、成果が求められることがたくさんあります。部活動は企業ほど成果主義ではありませんが、成功したり失敗したりという結果を生徒なりに経験できます。これは、広い意味のキャリア教育になります。例えば、部活動を通して、自分がいくら頑張ってもできないことや、追いつけない人・目標があることを知る、いわば「小さな挫折」を中学時代に体験しておくことは大切です。将来、もっと深刻な事態に直面しても立ち直ることができ、現実的な「少し上のレベル」に挑戦する意義や意欲を身につけることができるからです。
 中学生になると、どちらかというと「先に答えありき」で考えるようになります。しかし、部活動には先に知識や答えがありません。試行錯誤するうちに上達し、集団での自分の存在が見えてきます。つまり帰納的な営みなのです。教師はこうした部活動ならではのメリットを理解・納得し、生徒に伝えてほしいと思います。


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