特集3:職場体験の実践ポイント

片山俊行

▲片山俊行

Katayama Toshiyuki
兵庫県教育委員会 義務教育課課長

松尾達弥

▲松尾達弥

Matsuo Tatsuya
兵庫県教育委員会 義務教育課主任指導主事 兼中学校教育係長

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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特集3:兵庫県「トライやる・ウィーク」に学ぶ

職場体験の実践ポイント

2008年度で4年目を迎える、文部科学省の「キャリア・スタート・ウィーク」。
「5日間以上の職場体験」が本格実施に移される。
受け入れ先の確保や生徒への指導など、あらゆる面でより綿密な準備や支援が必要となる。
5日間の社会(職場)体験活動を1998年度から継続している兵庫県の事例から実践のヒントを探る。

11年目を迎え、県民に広く浸透
6月か11月の5日間で実施

 毎年6月と11月、兵庫県では至るところに「トライやる・ウィーク実施中」と書かれたのぼりがはためく。消防署や幼稚園といった公共施設から、レストランや工場まで、場所は実にさまざま。そこでは真剣な表情の中学生が従業員に指導されながら仕事に取り組み、通りかかった人たちは「どこの中学校?」「頑張ってね」と、生徒に言葉をかける。この取り組みが県民に広く浸透していることをうかがわせる光景だ。
 兵庫県が中学2年生を対象に行う5日間の職場体験活動「トライやる・ウィーク」は2008年度で11年目を迎える。きっかけは中学生の「心の教育」をめぐる危機感からだった。兵庫県教育委員会義務教育課の片山俊行課長は次のように話す。
 「95年の阪神・淡路大震災に続き、97年に神戸市須磨区で中学生が小学生を殺傷する事件が起き、教育の在り方を深く考えさせられました。そこで故河合隼雄(はやお)先生を座長とする『心の教育緊急会議』を設置し、子どもに生きる力を『教える』のではなく、体験を通して『育む』ことを目指す『トライやる・ウィーク』を始めました」
 事業は「心の教育」とキャリア教育を支える取り組みとして重視され、学校と地域社会との連携を強めながら続けられてきた。07年度には370校、4万6821名の中学2年生が1万5498か所で職場体験を行った。
 実施に際しては、県、市町ごとに推進協議会を、また中学校区ごとに校区推進委員会を組織して綿密に連絡を図る。例えば市町や中学校区では、商工会・ボランティア団体・PTAの各代表らを構成委員に迎え、官民さまざまな団体を巻き込む。事前に関係者に趣旨を理解してもらい、受け入れ先をスムーズに確保するためだ。
 実施期間は6月か11月のいずれかで各校に任されるが、日数は5日間と決められている。義務教育課の松尾達弥中学校教育係長は、「1、2日目は多くの生徒が挨拶もままならない状態です。3日目に職場に慣れ、4、5日目にやっと自分から動くようになる。達成感や自分が成長したという感覚を生徒自身が得るには、5日間という日数が必要です」と説明する。
 期間中は宿題を出さず、部活動も行わず、またできる限り塾や習い事も休んで、家族で話す時間を設けるように指導する。自分自身や仕事、社会についてじっくり考えさせ、教育効果を高めるための工夫だ。そのねらい通り、保護者へのアンケート(06年度、3万8395人を対象)で「期間中、この活動について子どもと話し合った」という回答は87.5%に上る。

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