特集3:職場体験の実践ポイント

篠山(ささやま)市立今田(こんだ)中学校


◎1947(昭和22)年開校。1小学校1中学校の小規模校。緑豊かな自然環境に恵まれた丹波焼の里で、校区には60軒近くの窯元が稼動する。町民運動会や陶器祭りといった地域行事が盛んで、住人には町ぐるみで子どもを育てようとする意識が高い。

校長●荻野益美先生

児童数●129名

学級数●7学級(うち特別支援学級2)

所在地●〒669-2153 兵庫県篠山市今田町今田新田11

TEL●079-597-3160

URL●http://konda-jh.
sasayama.jp/


西宮市立大社(たいしゃ)中学校


◎1947(昭和22)年開校。早くから文化・教育施設の設置を促進し、03年に「環境学習都市宣言」を行った西宮市の中心部に立地。西宮駅周辺の都市部から甲山山麓を含む山林地帯まで校区は起伏に富んでいる。教科学習では「自ら学ぶ観点」での研究を進める。

校長●平岡一夫先生

児童数●566名

学級数●18学級(うち特別支援学級2)

所在地●〒662-0021 兵庫県西宮市神原12-45

TEL●0798-73-5391

URL●http://kusunoki.nishi.
or.jp/school/taishaj/


VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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事前指導は平均11.6時間
生徒自らアポイントをとる

 「トライやる・ウィーク」は、事前準備→事前指導→実施→事後指導の流れで進められる。
 事前準備としてまず着手するのは、受け入れ先の確保だ。山あいにある小規模校の篠山(ささやま)市立今田(こんだ)中学校には、07年度は43名の2年生が在籍。26か所の受け入れ先のうち半数は、07年度に新たに探し出した。その多くは校区外にある事業所だ。「トライやる・ウィーク」担当の伊勢三十六先生はその理由をこう話す。
 「以前は校区内に数多く存在する丹波焼の窯元などの仕事を体験させていました。しかし、元々住民同士のつながりが強い地域のため、受け入れ先に生徒の顔見知りがいることもよくありました。生徒にとって慣れた環境よりも新しい世界に飛び込ませる方がプラスになると考え、校区外に受け入れ先を求めました」
 更に、生徒の第1希望を優先させたいという思いもあった。訪問先は生徒に職種の希望を聞いて決めるが、「希望が通らないと、意欲が減退することが多い」(伊勢先生)という。同校の校区内では職種が限られ、生徒の希望にかなう受け入れ先がなかなか見つからなかったのだ。
 07年度は伊勢先生が前任校で依頼していた受け入れ先を中心に連絡したため、比較的容易に決まった。しかし、事業開始当初は受け入れ先の確保にかなり苦労したと振り返る。
 「推進協議会の委員や卒業生、保護者など関係者の協力を得て確保しました。教師の多くは校外に出る機会が少ないですから、教師にとってもまさに『トライやる』です。丁寧に趣旨を説明すれば多くの事業所は協力してくれますが、『忙しくて5日間も面倒を見る余裕がない』などと断られることもありました」(伊勢先生)
 今田中学校とは対照的に、校区に都市部を含み、07年度は207名の2年生が在籍していた西宮市立大社(たいしゃ)中学校では、受け入れ先は実に72か所に上った。「子どもを地域に帰す」を主眼に、その大半は校区内にある。職種の希望が通らない生徒もいるというが、「トライやる・ウィーク」担当の丸林弘幸先生は次のような指導を通じて、生徒の意欲を高めている。
 「『近所のパン屋さんはどういう仕事をしているか知っている?』と聞くと、多くの生徒が答えられません。『学校の近くにも皆が知らない仕事はたくさんある』と関心を引き出し、自分が住む地域にはさまざまな職場でさまざまな人が働き、自分たちの生活が成り立っていることに目を向けさせるように努めています」
図1
  各校とも事前指導に力を入れる。06年度、事前指導に費やした時間数は、全校平均で11.6時間(図1)。事前指導では、趣旨説明や希望調査、受け入れ先への事前訪問、マナー指導などを行う。今田中学校では、実施1週間前に生徒が受け入れ先を事前訪問するが、その際には生徒自ら電話でアポイントを取る。電話のかけ方を学ばせると同時に、心の準備をさせるためだ。訪問先でのルールやマナー、トラブルへの対応も指導するが、具体的な仕事内容には詳しく触れない
 「生徒が自ら考える余地を残すようにしています。予期せぬ出来事や叱られる体験から、生徒は社会の厳しさを知るのです」(伊勢先生)

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