特集1:キャリア教育・進路指導:教科で進める「キャリア教育」

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 9/22 前ページ 次ページ

高校入試は自校の課題を発見するチャンス

 学校全体として見た場合に大切なことは、地域や自校の特性を踏まえて、学習プログラムを組み立てることです。職場体験一つをとっても、事業所の多い地域から少ない地域までさまざまです。生徒の将来のキャリアも、農村部と都市部では異なります。
 進路指導の先生が中心になってプログラムを考える際のよい入り口としては、高校入試が挙げられます。中学生にとって、高校時代は将来のキャリア・職業に続いていく大事な3年間となります。高校入試をどのようにキャリア教育に取り入れて考えるのかが、成功への分岐点の一つになるでしょう。
 今では、中学生の約72%が普通科高校に進学しています。世の中のありとあらゆる職業に就く可能性のある普通科になぜ進むのか。この点は、多くの生徒が中学校でのキャリア教育を通して改めて考える必要のあることだと考えます。その際、四つの能力領域だけを前提とするのではなく、高校生活の中で生徒はどのような課題に直面していくのかを知ることが大切です。
 中学校の先生と高校の先生がコミュニケーションを図る機会は、教科研究会や内申書のやりとりなどを通してあると思います。新たに交流の場を立ち上げるのは簡単ではありませんから、今ある機会を利用して、高校ではキャリア教育がどのように行われ、生徒はどのように進路を決めていくのかをつかむとよいでしょう。
 同様に、小学校とのやりとりも大切です。いわゆる中1ギャップの問題にしても、どんな課題を持った子たちが入学してくるのかを知ることが、ギャップ解消の手立てにもなります。
 このように、3~4年かけて、さまざまな観点を取り入れながら自校のキャリア教育をつくるといった気持ちで、できるところから始めればよいのです。
 「キャリア教育」という言葉が登場したのは99年のことでした。現在は、いろいろなアイデアや実践の中から良いものを探している、試行錯誤の段階といえるでしょう。互いに情報を発信し、受容し、再発信していくことによって、徐々に全体のカリキュラムや発達段階との整合性が図れていくと思います。


   PAGE 9/22 前ページ 次ページ