特集1:キャリア教育・進路指導:教科で進める「キャリア教育」

福岡県飯塚市立頴田中学校

福岡県飯塚市立頴田中学校

1947(昭和22)年開校。校区に小学校は1校のみで、生徒の大半は9年間を共に過ごす。05年度に旧頴田町が構造改革特区「教育のまち頴田」の認定を受け、キャリア教育のほか20人学級や小中一貫英語教育などに取り組んだ(07年度末に市町村合併により認定終了)。

校長●西大輔先生

児童数●160名

学級数●7学級(うち特別支援学級1)

所在地●〒820-1112
福岡県飯塚市鹿毛馬1667-2

TEL●09496-2-0126

FAX●09496-2-0180

URL●http://www.city-iizuka.
ed.jp/index.cfm/12,0,43,html


古野守和

▲飯塚市立頴田中学校

古野守和
Furuno Morikazu
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 10/22 前ページ 次ページ

【学校事例1】 福岡県飯塚市立頴田(かいた)中学校

生徒の実態を踏まえ
キャリア教育で「忍耐力」を育む

自己効力感や学習の役立ち感の乏しさからくる学習意欲の低下を、どのように克服すればよいのか。
飯塚市立頴田中学校は、すべての教育課程とキャリア発達にかかわる諸能力との関連を洗い出すと共に、生徒の実態に合わせて「忍耐力」をキャリア教育で育む能力として設定している。

「なぜその学習が必要なのか」教師自身が捉え直す

 筑豊の旧産炭地に位置する頴田中学校の校区には、産業構造の転換に伴う厳しい経済状況が残る。9年前に着任した古野守和先生は「将来への夢や希望を見いだせず、自己効力感が乏しい生徒が多い状況でした」と振り返る。10年ほど前までは、授業が成り立たないほど学校は荒れていた。そこで同校は、キャリア教育の観点から教育課程を見直すことで、生徒に将来に向けて学ぶことの意義を理解させ、学習意欲の向上、ひいては学力向上を図る取り組みを始めた。
 まず、学習指導要領における目標・内容について、キャリア発達にかかわる4能力領域(P.14参照)と関連する項目を全教科で洗い出した。社会科の場合、「地域的特色を捉えるための視点や方法を身につけさせる」という目標があるが、これは「情報活用能力」や「将来設計能力」に該当する、という具合だ。
▼クリックすると拡大します
図
 次に、教科ごとに、重点的に取り組む4能力領域と単元や題材との関連を明確にし(図)、教科の年間計画に明記した。古野先生は「数学科のように、キャリア諸能力との関連付けが難しい教科もあります。あくまでも教科の目標達成を最優先にして、キャリア教育の観点は副次的に重ねていきました。本校では、すべての単元をキャリア教育と関連させるのではなく、結び付けない単元があってもよしとしました」と話す。
 キャリア教育の評価規準も作成した。ただ、評価規準が多すぎて評価のための授業にならないよう、新たな規準はできるだけつくらず、従来の教科のものをそのまま当てはめた。
 「キャリア教育が学力向上につながることは大切ですが、良い成績を取らせることだけが、目的ではありません。長い目で見て、生徒が何のために学校で勉強しているのかを、まずは教師が捉え直し、教科学習が生徒の将来とどのように結び付いているのかを想像することが大切だと思います。生徒から『こんな勉強が何の役に立つの?』と問われたときに、説明できなければならないということです。納得する生徒としない生徒がいますが、教師として意識し続けることが大事なのではないでしょうか。ただ、生徒にその話ばかりしていては効果が薄れます。ここぞという大事な場面で話すようにしています」(古野先生)

   PAGE 10/22 前ページ 次ページ