特集1:キャリア教育・進路指導:教科で進める「キャリア教育」
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 11/22 前ページ 次ページ

取り組みを通じて教師自身の意識も変化

 同校では、年2回の調査を通して、生徒の変化を追跡している。結果から生徒の弱点を洗い出し、学年ごとに重点課題を設定し、全教科で対策を講じる。例えば、行事に向けて短期的には頑張るのだが、家庭学習などを長期的に続ける力が乏しく、すぐにあきらめてしまう傾向が全学年に共通して強いことがわかった。そこで、キャリア教育で身につけたい力に「忍耐力」を独自に加え、4能力領域の「意思決定能力」の一つとした。各教科・領域と関連付ける際も、「忍耐力」を「確認テストで基準に満たない場合は習熟するまで繰り返す」というように具体化し、全学年・全教科・領域()で重視している。
 「職場体験学習を始めた当初、生徒自身が適性を考える『自分探しの旅』をテーマに取り組んでいました。しかし、自分にぴったり合う職業を見つけることは大人でも難しいもの。多少自分に合わないと感じる仕事でも、我慢して周囲の人と協力し切磋琢磨(せっさたくま)する中で、スキルが磨かれるのではないでしょうか。そのために忍耐力は欠かせません」(古野先生)
 職場体験学習やボランティア体験学習、道徳教育の充実などさまざまな取り組みの効果もあり、同校の雰囲気はすっかり落ち着いた。生徒の学力も向上しており、将来に夢や希望を持つ生徒の割合は、全国の平均値と比較して高い数値を示すようになった。古野先生は「目に見えて変わっていく生徒と接していると、私たち自身も自然とやる気が高まってきます」と語る。
 キャリア教育の指導計画作成や実態調査の分析等は、教師全員が自らの取り組みに成果があったかを振り返り、改善策を考えるきっかけとなった。教育課程を教師全員でつくっているという意識が高まった点も、効果として大きい。
 「キャリア教育だけでは学力は向上しません。少人数指導や家庭学習の徹底などと組み合わせて、初めて成果が表れます。自分が任されている分野で、生徒の将来のためにどれだけの力をつけさせられるのか、教師自身がずっと問い続けることが大切だと思います」(古野先生)

注)3年生の国語を除く

   PAGE 11/22 前ページ 次ページ