特集2-新学習指導要領:事例で見る「言語活動」の取り入れ方

石川県金沢市立城南中学校

金沢市郊外に1959年開校。2006年から石川県の「読解力向上推進事業」に、08年から「児童生徒の『活用力』向上モデル事業」に指定され(それぞれ2年間)、「ことば力向上」に取り組んでいる。

校長●米田茂先生

児童数●481名

学級数●13学級

所在地●〒920-0966
石川県金沢市城南1-24-1

TEL●076-221-6979

FAX●076-221-6970

URL●http://www.
kanazawa-city.ed.jp/jyounan-j/


石田幸枝

▲金沢市立城南中学校教諭

石田幸枝
Ishida Yukie
研究主任、英語担当
中屋隆彦

▲金沢市立城南中学校教諭

中屋隆彦
Nakaya Takahiko
3学年主任、社会担当
初道一樹

▲金沢市立城南中学校教諭

初道一樹
Shodo Kazuki
進路指導主事、社会担当
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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今号のキーワード<各教科での言語活動>

特集2

事例で見る「言語活動」の取り入れ方

新学習指導要領のポイントの一つである「言語活動の充実」。国語だけではなく、全教科で言語活動を取り入れることが定められた。
そこで、2006年度から全教科で言語活動を導入している石川県金沢市立城南中学校に取り組みのヒントを探ると共に、国立教育政策研究所の工藤文三先生に「言語活動」の位置づけと指導のポイントをうかがった。

「総合的な学習の時間」の一部で「ことば力」の基礎を習得

 新学習指導要領の総則には、各教科で「言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え、生徒の言語活動を充実すること」が明記された。「言語」の捉え方が少しずつ変わり、新学習指導要領では「内容」に盛り込まれた(図1)。ただ、国語以外の教科における言語活動はどのようなものなのか、具体的にイメージするのは難しい。
図
 金沢市立城南中学校は、2006年度から2年間、石川県教育委員会の研究事業「読解力向上推進事業」の指定を受けたことをきっかけに、言語力の育成に取り組み始めた。研究主題は「ことば力向上」。さまざまな学習の基礎である「ことば力」を高めることで、教科学力の向上を図り、考える力、感じる力、自己表現力、質問力、想像力、説得力などを育成することがねらいだ。
 同校では「ことば力」を「読む・聞く・話す・書く」の4技能と定義している。なぜ、研究事業名の「読解力」ではなく「ことば力」としたのか。研究主任の石田幸枝先生は、「読解力というと国語をイメージします。全教科が責任を持って取り組むためにも、読解力という言葉は使いたくありませんでした」と説明する。
 生徒が抱える課題を解決する糸口にしたいという思いもあった。「今の生徒は語彙が少なく、自分の思いを適切に相手に伝えられないことから、人間関係でトラブルになることがあります。学力だけでなく、日常生活で適切にコミュニケーションできる力を身につけてほしいと思いました」(石田先生)
 「ことば力向上」を各教科で進めるために、どの教科も、意見交換などのグループ活動を授業の中心に据えた。生徒同士の学び合いを通して、自分の意見や考えを正確に伝え合う力を身につけさせられると考えたからだ。
 取り組みの当初、「ことば力向上」の実践は各教科のグループ活動のみに任され、活動の手順や討論、発表の仕方も、各教科で指導していた。しかし、論理的に伝える力、相手の話を聞く力などが不足していたために、議論が活性化しない場面が多々見られたという。社会科の中屋隆彦先生は次のように話す。
 「例えば、授業でいくら資料の読み取り方を教えても、論理的なものの考え方や話し方などが身についていなければ、建設的な議論はできません。言語技術については各教科で指導するよりも、基礎になる技術を一斉に、しかも早い時期に身につけさせる必要性を感じました」
 そこで、07年度に「総合的な学習の時間(以下、総合学習)」の一部を「ことばの時間」と位置づけ、重要事項から順に話すなどの発表の仕方、5W1Hの意識、事実と意見との区別、描写・要約の仕方など、「ことば力」の基礎を習得させることとした。1年生の4~7月にこの活動を集中的に行い、2・3年生では総合学習のほかの活動と並行させる。また、生徒全員の基礎的な力をそろえるため、総合学習担当の教師が中心となり、学年で共通の内容を指導する
 「総合学習ならほとんどの教師がかかわります。教師同士の情報共有によって、生徒ができることとできないことをすべての教師が把握できるため、効率的に授業が組み立てられるようになりました」(石田先生)
 「ことばの時間」で論理的に考えたり、意見を書いたり、交換したりする方法を学ぶことで、各教科ではそれぞれの教科内容を通じて「ことば力」をより高めていくという仕組みができ上がった。

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