特集2-新学習指導要領:事例で見る「言語活動」の取り入れ方
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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議論の時間を確保するためワークシートを活用

 各教科の授業は、どのように進められるのだろうか。08年2月に実施された3年生の社会科の研究授業を例に見てみたい(図2)。
図
 テーマは「21世紀の資源・エネルギー問題」。有限のエネルギー資源に対し、どう対処すべきかを資料を基に考え、グループ内で話し合い、意見をまとめる。ポイントは、「根拠を基に考えた自分の考えを、相手にどのように理解してもらうか」だ。研究授業を担当した初道(しょどう)一樹先生は、工夫した点を次のように話す。
 「いきなり口頭で発表させるのは難しいため、前の授業でテーマに対する自分の考えをまとめさせ、ワークシートに記入させておきます。話し合いの時間を十分に確保できる上、すべての生徒が自分の意見を持って授業に臨めるため、グループごとに結論をまとめやすくなります」
 A4サイズ1枚のワークシートには、「どう対処すればよいのか」という課題に加え、「まず結論を述べる。一つに絞って具体的に書く」「必ず資料を用いて二つ以上の根拠を挙げる」など、細かい条件を指定しておく。方法を提示し、生徒の思考の焦点を絞ることで、論理的かつ具体的な結論を導き出そうというわけだ
 グループ構成も工夫する。当初、6人で一つのグループにしたところ、発言しない生徒も見られた。積極的に活動に参加する姿勢を引き出すために、1グループ4人にして、進行、発表、書記(黒板・記録)の係を割り当てた
 今回の授業では、発表後、各グループから出された対処法のランク付けをさせた。単に「わかりやすかった」「面白かった」という基準ではなく、きちんと根拠を考えさせる。また、教師はどのグループが最もよかったかということや、課題に対する正解を述べない。テーマに対する正解を出すことよりも、根拠を持って説明する力や伝え合う力を養うことを重視している。
 ただ、ほかのグループへの質問や疑問を出したり、賛成・反対の意見を述べさせる場面などでは、生徒の発言は少なかった。初道先生は「こうした活動は、何度も繰り返すことが大切。低学年から当たり前のように取り入れていくことで、生徒も慣れ、身についていくものだと思います。今年度の授業では、議論させる場面を毎時間取り入れていくつもりです」と話す。各教科の指導内容の中で、生徒が話し合いをしたい、しやすいテーマを設定することもポイントだ。
 とはいえ、活動中心の授業を毎回行うことは難しい。「基礎・基本の部分はまとめのプリントを使って定着を図るなど、めりはりをつける必要があります」と中屋先生は話す。
 「ことば力向上」の取り組みを始めて3年目。現在は学校全体で言語活動に取り組む仕組みができているが、当初、国語科以外では、戸惑いを覚える教師もいたという。
 「研修部から提案があったとき、私も含めて、教師それぞれで『ことば力』の捉え方が違いました。研究授業でほかの先生の意見を聞いたり、言語力に関する解説書を読んだり模索したりする中で、だんだん提案の意味やねらいがわかるようになってきました。大切なのは、とにかく取り組んでみること。その上で、生徒の変化に応じて、改善を重ねることが大切なのではないでしょうか」(中屋先生)

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