神田 |
学級のまとまりをいかにつくるかが、学校行事のポイントの一つだと思います。そのためには、特に生徒同士の話し合いが重要だと捉えていますが、最近、生徒の気質が変わってきたのか、うまく進まないことがよくあります。普段の生活の中で、グループで話し合うような経験が少ないのかもしれません。 |
山下 |
私もそう感じます。お互いに思ったことを言い合い、その上で歩み寄る「話し合い」ができない。言いっぱなしで、友だちを傷つけてしまうのです。 |
桂林 |
コミュニケーションが苦手な生徒は以前からいましたが、だれかが仲間になってあげていたと思うんです。それが今では、話さない相手にはだれもが距離を置こうとする。だからこそ、全員参加での話し合いが重要な学校行事は、学級をまとめるよい機会に位置付けられると思います。 |
伊藤 |
そうですね。先ほど行事運営は基本的に生徒に任せるというお話がありました。担任としてのかかわりはどのようになさっていますか。 |
山下 |
生徒に任せた場合、リーダーの存在が重要になると思いますが、徹底してリーダーに任せる先生と、リーダーの相談に応じて声をかける先生と、先生によって対応の仕方はさまざまですね。中には、「もう少し先生に声をかけてほしいな……」と思う生徒もいるようです。リーダーになるような生徒は責任感が強い。心理的なプレッシャーがあまりに強すぎて、保健室に来るような場合もあります。そうしたときは本当に辛い状況に置かれていると思いますから、養護教諭の立場から担任に、生徒に声をかけてもらうように伝えています。 |
神田 |
教師が出すぎると失敗してしまいますが、かといって、いないと生徒は不安になる。かかわり方のバランスが大切だと思います。 |
北村 |
リーダーとなる役割をできるだけ多く設けるのも、一つの工夫ではないでしょうか。責任を分担したり、話し合う仲間がいたりすることによって、一部の生徒だけが悩んでしまう状況が少なくなるでしょう。 |
神田 |
今の生徒は、リーダーになる経験が少ないように感じていたので、その方法はよいと思います。 |
北村 |
合唱祭なら合唱委員や指揮者、伴奏者、パートリーダー、音取りのリーダーなど、いろいろな役割があるので、よい機会となります。 |
神田 |
リーダーにうまく役割を任せることで、行事の準備がうまくいくかどうかは、担任がどれだけ見ているかにかかっていると思います。普段から昼休みに教室にいるようにするだけでも、生徒の動きは自然と見えてきます。 |
伊藤 |
それは重要ですね。私は担任の先生から学級経営の相談を受けたときに、「昼休みにできるだけ教室にいるようにしてみてください」とアドバイスすることがあります。それだけで学級の雰囲気が変わり、いじめなどの問題も解消していくことがあります。 |
山下 |
生徒は、先生が近くにいてくれるのが本当に嬉しいのだと思います。行事に限らず、保健室に来る生徒は「問題を解決してほしい」のではなく、「自分の話を聞いてほしい」ことが多いのです。私が黙って話を聞いていると気持ちがすっきりするのか、特に言葉をかけなくても教室に帰っていきます。ですから、担任がそばにいるだけで、生徒の気持ちも違うと思うのです。 |