特集1 :生徒指導:行事で育てる高め合う生徒
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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年度始めにつくった学級の基盤を、行事をきっかけに強化する

神田 学校行事で学級がよい方向に進むかどうかは、年度始めに学級の基盤をつくることが大事だと思います。土台がしっかりしていれば、集団からはみ出る生徒がいても「先生、あの子には僕から話すから」という生徒がいて、生徒同士が声をかけ合える関係になっています
桂林 教師よりも友だちから言われた方が、生徒もこたえますよね。
神田 特に4月の学級開きの時期が大切ですね。本校では、4月は校歌、5月は応援歌を朝のSHRで歌います。歌うことによって「本校の生徒」という自覚を促していくのです。更に、6月末の中体連地区大会の壮行会に向けては、応援団が各学級を回って指導もします。「声が小さい!」と言われて、みんなで声を出していくうちに、学級の連帯感が生まれるようです。
伊藤 どんなクラスメイトがいるのかわからないうちから声を出すことによって、学級の連帯感や帰属意識を高めていくわけですね。
神田 本校では5月に「学級目標発表会」を行います。その名の通り、1年間の学級の目標を発表するのですが、肩を組んで歌ったり、劇をしたりと、表現方法は自由です。自分たちの理想の学級はどのような学級か、それをどのように発表するかを、1か月かけて話し合って決めます。この過程こそが学級がまとまるきっかけになります。
伊藤 生徒同士の協力が必要な行事を、あえて年度当初に設けているのですね。
神田 はい。ですから私は4月から、どのような学級にしたいかを生徒に話しています。中学校では「生徒の自立」が生徒指導の目的の一つですが、年度始めの時期に生徒と教師がとことんかかわった方がうまくいくと思います。
桂林 私は、卒業時にクラスメイトの前で自分の進学先を発表できる、そして、クラス全員が心から拍手を送れるような学級にすることを目標としていました。これは、生徒が互いを認め合う関係にならなければできません。学校行事は、この目標に向けた学級づくりをする手段と捉えていました。
伊藤 年間の学校行事を見通し、行事ごとに段階的なねらいを設定して、指導されているわけですね。
桂林 はい。前任校では体育祭、合唱祭、文化祭という順に学校行事がありました。そこで、スポーツで仲間意識が芽生え、合唱で共に達成感を味わい、文化祭はクラスを紹介するという流れを意識して指導していました。また、行事の前には、行事のねらいに即した構成的グループエンカウンターを行いました。例えば、体育祭の前には集団の輪をつくるといった活動です。
伊藤 体育祭、合唱祭、文化祭と、単に得点を取って「勝つ」ことから、学級の特徴を「理解」して「紹介する」という、より抽象的で高度な目標になっていくのですね。年間を通した学級づくりの流れに各行事を位置付けて、年間計画を立てる工夫ですね。
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