神田 |
生徒のモチベーションを上げるためには、学級づくりと共に、行事自体の伝統をつくっていく工夫も必要だと思います。本校では、卒業時に、その学年の3年間の合唱コンクールを録音したCDをつくって配っています。また、卒業式で証書を渡すときにそのCDをかけます。後輩はその様子を見て、「自分たちの卒業式でも、クラスみんなで歌った合唱が流れるんだ」と特別な思いを抱き、3年生での合唱コンクールに臨むわけです。 |
伊藤 |
それを続けることが学校の伝統となり、生徒の行事への思い入れを強くしているわけですね。 |
神田 |
はい。もう一つ、合唱コンクールでは優勝した学級は、アンコールでもう1回歌えることになっています。それも生徒にとってはやる気が高まるきっかけになっています。 |
北村 |
学校それぞれの伝統や独自の行事がありますよね。本校では、体育祭を学級縦割りで行っていて、応援団やリレーなどの指導を3年生が行います。同様に、地域のボランティア活動でのごみ集めや草刈りを学級縦割りで行います。3年生は自治会の代表者の方との連絡係です。先輩から学校の伝統を引き継ぎ、次につないでいくことが生徒の意欲につながっています。 |
神田 |
伝統は、学校のアイデンティティづくりにも密接にかかわります。前任校は海のそばにあったため、「砂の造形大会」という学級対抗の行事が5月末にありました。砂浜の15メートル四方くらいのエリアに、学級全員でテーマを決めて、砂でオブジェをつくります。大変な労力がかかるので、やめようという話が毎年出ますが、これをなくしたら学校のアイデンティティが失われてしまうという議論になり、現在も継続しているようです。 |
伊藤 |
「学校行事を精選する」という声も聞かれますが、先生方の学校ではどのような状況でしょうか。 |
山下 |
本校は二学期制になったときに行事を精選しました。前任校では遠足も取りやめ、行事の準備に費やす時間も削りました。あまり行事が多すぎると、生徒が落ち着かないと感じることがあります。練習に熱中するあまり、けがも多くなります。夜中に近所の公園で練習していることもあります。そういったことが続くと心配ですね。 |
桂林 |
行事自体を精選することが必要な場合もありますが、行事の準備を効率化し、教師の負担を軽くする方法もあると思います。前任校では、体育祭の学年種目を毎年、生徒が話し合って決めていましたが、時間と手間がかかりました。一方、現在の学校では毎年同じ種目にしています。今までしていたことを変えるのには反発があるかもしれませんが、体育祭の種目を厳選する、文化祭を半日にするといったことは、行事のよさを残しつつ、負担を減らす方法の一つだと思います。 |