特集1 :生徒指導:行事で育てる高め合う生徒
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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生徒同士がぶつかりながら、高め合う集団を目指して

図  08年度の3年生は、1年生のときから大合唱を経験している、いわば1期生だ。生徒はどのように成長したのだろうか。
 例えば、登校中のゴミ拾い。ゴミを拾う1年生は50%程度なのに対し、3年生は70~90%と高い。「地域に入って、地域の人々と一緒に行動することが大切という思いが、生徒の間で高まった」というのが増田先生の実感だ。
 あるとき、校内で器物が壊れていたことがあり、全校生徒と家庭に知らせた。自分がやったと名乗り出る生徒はおらず、生徒会が動いた。全校集会を開き、生徒会長が「まじめな子がばかをみるようなことは、絶対に許せない」と訴えたのだ。数時間後、ある生徒が名乗り出た。
 「教師から頭ごなしに『だれがやった』と言われたのではない、仲間の言葉が心に響いたのではないでしょうか。それは、必ずしも校歌合唱の効果というわけではないかもしれません。しかし、1年生のときから培ってきた集団の力が生んだ成果の一つだと私は考えています。その根幹には、地域や家庭に支えられて今の自分がある、学校があるという、感謝の気持ちがあると思います」(増田先生)
 08年度の生徒会が掲げるスローガンは「団結~地域とつながり創る生徒会」。学校から地域へと、生徒自身の視野は広がっている。
 同校は新たな行事も計画中だ。それは、卒業していく中3生と、次年度に入学する小学6年生がエールを交換する「メモリアルコンサート」を09年3月に開くこと。中3生が校歌を歌うことで、学校を大切にする思いを小学6年生に託してほしいというねらいがある。
 学校・保護者・地域が共に生徒を育てる「共育」の輪は着実に広がっている(左図)。ただ、生徒同士で意見をぶつけ合いながら、お互いを高めていくような集団の力がまだ乏しいという。
 「地域の方々の姿が鏡になって、生徒は自分の生活を振り返り、『これではいけない』と少しずつ変わってきました。しかし、まだ発展途上です。08年度の重点目標は『集団づくり』です。お互いに高め合う生徒集団を一歩ずつつくっていきたいと考えています」(吉江校長)

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