特集2-新学習指導要領が示すこれからの理数教育
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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今号のキーワード<理数教育><改訂のポイント><指導の改善>

特集2
新学習指導要領が示す
これからの理数教育

「理数教育の充実」を掲げる新学習指導要領では、どのような学力の育成が目指されているのか。
数学および理科の改訂のポイントやこれから準備すべきことを整理すると共に、
求められる指導のポイントを国立教育政策研究所の工藤文三先生にうかがった。

なぜ「理数教育の充実」が求められているのか?

  新学習指導要領では、「理数教育の充実」が柱の一つに掲げられている。その背景は、次のように整理できる()。
  1. 「知識基盤社会」への対応の必要性
     21世紀は、「知識基盤社会」とも言われる。知識基盤社会では、新しい知識や情報、技術が、政治や経済、文化といったあらゆる領域での活動の基盤として重要性を増す。また、科学技術は競争力と生産性向上の源泉であり、国際的な競争が激化している。科学技術立国を目指す日本では、科学技術の土台となる理数教育の充実は欠かせない。
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  3. 理数教科への関心の低さ
     日本の子どもの理数教科に対する関心は、国際的に見て低い傾向にある。2003年、国際教育到達度評価学会(IEA)が中学2年生を対象に実施した国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)では、「将来、自分が望む仕事につくためによい成績を取る必要があるか」という質問に対し、「強くそう思う」「そう思う」と回答した生徒の割合は、数学については国際平均の73%に対し、日本は47%であった。理科についても国際平均の66%に対し、日本は39%にとどまっている。
     また、06年に15歳児(日本では高校1年生)を対象に実施した経済協力開発機構(OECD)のPISA調査では、「大人になったら科学の研究や事業に関する仕事がしたい」と回答した生徒の割合は、OECD参加国平均の27%に対し、日本は17%であった。その他の設問からも、科学への興味・関心や楽しさを感じる生徒の割合が比較的低いことが明らかになった。
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  5. 「言語活動の充実」との関連
     今回の学習指導要領の改訂では、思考力・判断力・表現力等を育てるため「言語活動の充実」が重視されている。08年1月の中央教育審議会答申によると、そのために「比較や分類、関連付けといった考えるための技法、帰納的な考え方や演繹的な考え方などを活用して説明する」などの活動が重要とされている。こうした活動を行う場として、理数教科が期待されている。

注 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」 を基に編集部が整理


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