特集3-教師はコーチ、保護者は応援団長3年秋からの進路指導
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 25/28 前ページ 次ページ

進路を考え学習に集中する 雰囲気をつくる

 学級担任として配慮すべきことは、生徒の日々の生活習慣、健康、物事に取り組む意欲だ。熊本県南小国町立南小国中学校の桑崎剛教頭は、「普段の生活態度をしっかり見て取ることが、秋から入試直前まで、生徒の状態が上り調子なのか、または逆なのかの、学力の伸びしろを見極める指標の一つとなります」と説明する。
 個別指導だけでなく、進路決定に向けた学級・学年全体の雰囲気づくりも重要だ。例えば、教室内を整理整頓し、進路選択に関する掲示物は目につくところに貼る。または、廊下など学年共通のスペースを活用する。これらは、進路指導主事や学年主任がリードして担任全員に働きかけるとよい。
「落ち着いた雰囲気づくりが難しい学校もあるかもしれません。しかし、例えば、掲示物が破られていたら必ず翌日までに貼り直すなど、教師自身が目標に向かって粘り強く頑張る姿を見せれば、すぐには効果が表れなくても生徒は教師の意図を理解できるはずです」(関本校長)
 こうした細かい指導の積み重ねが、勉強したい生徒が孤立せず安心して学習できるようになり、かつ周囲の生徒も含めて落ち着いた雰囲気を教室にもたらす。

若手教師に意識させたい早めの「報・連・相」

 進路指導の知識や経験が少ない若手教師に対しては、生徒一人ひとりの進路について学年全体で考え、情報を共有することの大切さや、問題が起きそうな場合は早めに周囲の教師に相談することを意識させたい。桑崎教頭は、「進路指導は時間との戦い。保護者とトラブルになりそうなときなど、責任感やプライドから若手教師が1人で問題を背負い込んでしまい、悩んでいる間に事態が深刻になることがあります。ベテランの先生は、『もっとこんな方法がある』『保護者にこう伝えてみたらどうか』など、先輩としてのノウハウを積極的に示す必要があります。注意したいのは、ベテランが若手の代わりに問題を解決してしまうのではなく、あくまでもアドバイスに徹すること」と指摘する。
 かつては若手が先輩の言動を見習って習得したスキルも、今の若手には言葉にして伝えないと伝わらないことがある。「現場の多忙化が進み、教師自身が上級学校を訪問して、学校の様子を肌で感じる機会は少なくなりました。それでも若手は情報収集する時間を捻出する工夫と熱意が必要だし、ベテランは、以前とは状況が異なることをくんで、高校の様子などを具体的に指導してほしい」(関本校長)

キャリア教育の観点を無駄なく無理なく導入

 小誌が行った読者アンケートでは、3年生になると、それまでに行ってきたキャリア教育が受験によって意味をなさなくなる、という趣旨の声が寄せられた。これに対して埼玉県ふじみ野市教育委員会の堀川博基指導主事は、「そんなことはない」と強調する。「職場体験やその前の調べ学習、受け入れ先の選択など、自分の将来に関する情報を収集したり、考えたりするプロセス自体が、進路を考える意欲の土台になっています。職場体験だけではなく、学校訪問や日々の教科指導などでも同じ。普段から『なぜ、何のためにそれをしているのか』を考える習慣を付けさせる指導を積み重ねることで、進路選択の際にも、生徒がなぜその学校に行きたいのかを、自然と自問自答するようになります」
 進路選択の主役は生徒であり、スポーツに例えれば教師はコーチ、保護者は応援団といえる。入試に向けて生徒の緊張感やストレスが高まる中、教師が一丸となって、生徒に「つかず離れず寄り添う」指導を心がけたい。

   PAGE 25/28 前ページ 次ページ