記念特集 中学校教育のこれまでとこれから
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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自分なりに教師としての世界観を持つ

 教師に求められていることは大きく二つあると、私は考えます(図1)。一つは、社会観や将来観といった教師として核となる世界観を持つこと、もう一つは、教師同士の自主的なつながりを取り戻すことです。
図1
 教育の役割は、子どもにさまざまなことを教えて一人前に育て、子どもを通して未来の社会をつくることです。しかし今の教育では、目の前にいる子どもの姿ばかりに焦点が絞られているのではないでしょうか。どのような社会をつくるのか、そのために子どもに何を伝えるべきか、そうした視点を忘れがちなのが現状だと思います。
 そこで大切になるのが、社会観や将来観を持つことです。教育は原則的に、より良い世界を実現しようとする理念先行型で進めるものです。より良い世界とは、環境問題を心配しないでよい世界かもしれません。安心・安全な社会かもしれません。自分はどのような世界を目指したいのかを考えることが大切なのです。その上で、例えば経済不況や環境問題に直面したとき、子どもにどのような力があれば乗りきれるのかといった視点が必要です。
 そう考えると、教師がしなければならないことが見えてきます。いわゆる「学力」を身に付けさせるだけでなく、子どもたちが20年後、30年後に大人になったときにどのような力が必要なのか、そうしたことを見越して、中学校では何ができるかを考えていただきたいのです。子どもの世界と、子どもが見ているより遥か遠くの世界。この二つの世界を両方考えられる先生であれば、子どもは「一緒に楽しく過ごしているけれど、やっぱり先生は違う」と思えるのではないでしょうか。
 社会観や将来観を持つためには、人は何のために生きているのか、どうして生きるのかといった人生観も必要です。「なぜ学ぶのか」という子どもの問いかけに対して「高校入試があるから」と答えるだけでは、先生は単に子どもを高校に送り出すだけの存在になってしまいます。教師自身の人生経験を基に自分なりに答えられなければ、子どもは納得して、教師を信頼することはないでしょう。
 難しいかもしれませんが、自分なりの教育哲学や人間哲学をつくり上げていただきたいと思います。

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