記念特集 中学校教育のこれまでとこれから
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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教師間で1年後、3年後の具体的な目標を共有

 ベテラン教師と若手教師の文化的な違いがコミュニケーションの壁になっていることもあるでしょう。しかし、学年団でまとまっているのが中学校教師の強みです。学年団のチームワークが取れていれば、たいていの問題は解決できると思います。
 学年団のチームワークを高めるために、学年の短・中期的な目標を立ててみてはどうでしょうか。短期目標は「1年後に生徒をどのレベルまで成長させるか」、中期目標は「今年入学した生徒に、3年後にはどのような姿で卒業してほしいか」といったことです。
 目標を立てる際に注意したいのは、抽象的な内容ではなく、生徒がどのような行動ができるようになるのかまで具体的な項目を挙げることです。例えば、「思いやりのある生徒」ではなく、「隣の席の生徒が欠席したときに、声をかけてあげられる生徒」と具体的な言葉で表すのです。具体的な目標を共有していれば、それに沿って学級経営や授業を組み立てられます。教師間に多少の考え方の違いがあっても、学年団としての足並みをそろえられ、チームワークは自然と高まるものです。
 目標があれば、「指導すべきこと」と「そのままにしてよいこと」の取捨選択がしやすくなります。生徒が何か問題を起こしたとしても、目標に当てはまらない小さなことならあまり気にしないでかまいません。生徒が失敗や悪いことをしても、その経験が役に立ち、3年後、あるいは大人になって克服していれば問題ないからです。
 教育においては、長らく「開発の物語」とでもいうべき考え方が支配的でした。明るい日の当たる面だけを重視して、人は、能力や可能性を一方向に直線的に開花させていくという考え方です。しかし、こうした捉え方は、「成長」の意味を貧しくさせます。病や老いや、生活・人生のさまざまな課題に向き合い対処できる力を、少しずつでもつけていかねばなりません。
 子どもたちの失敗、逸脱や戸惑い、立ち止まり、反発も、成長の契機と捉え、子どもの成長を長期的な視点から見ることが必要でしょう。

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