ベネッセのデータでみる子どもと教育

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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まとめ

「自立」に向けた 「自律」を促す環境づくりを

 中学生の携帯電話の所有率は5割弱だが、高校生の所有率(【1】)を見ても分かる通り、たとえ今は持っていなくても、近い将来、進学などを機会に多くの子どもが携帯電話を持つ可能性は高い。現在、99%の中学校で携帯電話の持ち込みを禁止している()が、これだけでは携帯電話を介したいじめや犯罪といった問題の抜本的解決にはつながらない。むしろ、生徒自身が「こういう使い方は危険だな、してはいけないな」「今日はそろそろケータイをやめて勉強しよう」などと携帯電話の使い方を自発的にコントロールできるように導くことが重要ではないだろうか。
 中学生は、周囲から離れ、心理的な自立に向けた準備を進める思春期に当たる。友人関係を中心に社会性を育む時期でもある。携帯電話についても、ルールを一方的に伝えて守らせるだけでは、反発したり、隠れて危険な使い方をしたりすることもあるだろう。携帯電話は「究極のパーソナルツール」とも言われる。かつては別の方法で行われていた友人とのコミュニケーションや自己PRの手段が、今は「ケータイ」というツールに凝縮されている。善悪は別にして、頻繁なメールのやりとりは、友だちとのコミュニケーション願望の自然な表れと考えることも出来る。
 そうした中、学校や保護者が果たすべき役割は非常に大きい。実際、保護者の目を意識する生徒ほど、携帯電話の利用マナーに気を配る(【4】)など、大人がかかわることで良い影響を及ぼすようだ。
 携帯電話の使用・不使用の判断や使い方は、下校後の過ごし方や保護者の教育方針など、子どもの状況によって異なる。一律の指導ではなく、目の前の子ども一人ひとりに合わせた対応が求められている。教師や保護者は、問題が発生した場合や話し合いの必要性を感じた場合に子どもとコミュニケーションを取れる関係を日頃から築いておくことが大切ではないだろうか。



文部科学省「学校における携帯電話等の取扱い等に関する調査について」(2008年調査)

【1】~【6】出典


 「子どものICT利用実態調査」ベネッセ教育研究開発センター
調査時期は2008年9~11月、調査対象は公立学校の小学4年生~高校2年生で、有効回答数は合計10,267人(うち中学生は3,298人)。抽出法は市区町村の人口規模及び人口密度を考慮した有意抽出法。

研修会や保護者会に役立つ!
携帯電話や情報モラル教育のお薦めウェブサイト
文部科学省
子どもの携帯電話等の利用に関する調査(速報)
http://www.mext.go.jp/b_menu/
houdou/21/02/1246177.htm

◎保護者のかかわりの度合いが子どもの利用マナーに及ぼす影響や、学校における情報モラル教育の取り組みなど、最新情報が分かる

モバイル社会研究所[(株)NTTドコモ]
モバイル社会白書2007
http://www.moba-ken.jp/theme/
whitepaper/whitepaper2007/
whitepaper2007-content


◎携帯電話に関する児童・生徒からの相談内容など、教師のみを対象に行った調査結果もある。暮らしや文化、産業など幅広い視点から携帯電話をとらえたデータが興味深い

教材「みんなのケータイ」
http://www.moba-ken.jp/
theme/kidsmobile/textbook


◎携帯電話の利用マナーを学ぶための配布用素材や学習指導案が豊富
社団法人日本PTA全国協議会
子どもとメディアに関する意識調査
http://www.nrsquare.com/pta/
book_kodomotomedia_h20/

◎携帯電話だけでなく、ゲームやインターネット、漫画などメディア全般に関する子どもと保護者の意識が分かる

社団法人日本教育工学振興会
やってみよう情報モラル教育
http://www.kayoo.info/
moral-guidebook-2007/

◎携帯電話やインターネットについて、使い方のルールやマナーだけではなく、日々の授業に取り入れたい便利な機能や実際の活用例、カリキュラムが多数掲載されている

総務省
第5回情報化社会と青少年に関する意識調査
http://www8.cao.go.jp/
youth/kenkyu/jouhou5/index.html

◎利用のルールやフィルタリングサービスについて、子どもと保護者の考えの違いが分かる。それぞれのデータがダウンロードできる
*上記は2009年4月時点での情報です
次号予告
『生活時間』について取り上げます

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