おおの・やすき
九州大大学院人間環境学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(教育学)。専門は学校経営学。大阪教育大助教授などを経て現職。2006年から文部科学省学校評価委員。主な著書は『スクールマネジメント』(ミネルヴァ書房、執筆分担)、『学校評価を共に創る』(学事出版、執筆分担)など
家庭学習とその指導に関する課題を解決し、生徒の学力を向上させるために 学校が出来ることは何だろうか――。兵庫教育大大学院の大野裕己准教授に話を聞いた。
学力向上のために、先生方はこれまでもさまざまな形で家庭学習指導を行ってきました。その多くは、学校が方針を立てて組織的に行うものではなく、教師個人の判断と工夫によるものです。学校教育はそもそも、子どもを家庭から離し、社会共通の知識基盤を一斉に教える使命を担っています。そのため、学校は、家庭での教育や子どもの学習に立ち入ることには積極的な立場をとらなかったのです。 ところが、子どもを取り巻く環境は変化しています。家庭の教育力の低下などから、これまで家庭の役割とされてきた基本的な生活習慣や学習習慣の確立といった点も含めて、学校への期待と責任が否応なしに大きくなっています。家庭や地域社会に対して、学校が教育活動の結果を報告し、評価される動きが強まり、家庭との連携に関する法制度(*1)が作られたのはご存じの通りです。 こうした中、家庭や地域から信頼される学校となるためにも、学校内だけではなく、家庭学習を含めた形での学力保障に取り組むことが求められているのです。 そうなると、従来のような教師個人の努力や工夫に依存した家庭学習指導では限界があります。教師の負担は無限に拡大できるものではないので、先生の指導のばらつきが保護者からの不信感を招く場合もあると思います。また、私たちの調査研究(*2)から、家庭学習は学力向上という学校全体の目的と密接な関係があることが明らかになっています。これらから先生方にお伝えしたいことは、今後は、学校が家庭の信頼と協力を得て、組織的に学校と家庭の学習を連携させることが大事になる、ということです。