特集 研究授業を活性化させる!
大塚 悟

▲東京都文京区立音羽中学校

大塚 悟

おおつか・さとる

◎教職歴30年。教務主幹。技術科担当。「研究授業を通して、教科を超えた指導方法の改善と新しい情報の収集を心掛けています。最近の関心事はICTの活用です」

川合雅哉

▲静岡県駿東郡清水町立南中学校

川合雅哉

かわい・まさや

◎教職歴12年。学習指導部長。理科担当。「研究授業は、多くの教師の考えに接して発想を転換できる機会になっています」


VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【対談】

「研究授業は役立つ」という実感が
負担感をやりがいに変える

研究授業の必要性を感じながらも、効果的に取り組むのが難しいのはなぜか。
現場が抱える課題と改善の方向性について、
研究を統括する立場の教師と、若手のリーダー的な立場にある教師に聞いた。

課題
授業、生徒指導、部活動指導 研究の前に立ちはだかる多忙感

図1:中学校における授業研究を伴う校内研修の年間実施回数

─「授業力の向上は必要だと思うが、そのために研究授業をすることには乗り気でない」という声をよく耳にします。文部科学省の調査結果(図1)でも、「授業研究を伴う校内研修の実施回数」は年3、4回が多く、小学校の平均回数よりも少ないという結果が出ています。こうした状況をどのようにお考えですか。

川合 教師は、何よりも「授業」を大事にすべきだと思います。研究授業を通じて学んだことを実際に試して、生徒の反応が良かった時などは、研究授業を行って良かったと思います。ただ、とにかく忙しく、研究授業を行う時間の確保が難しいことが最大の課題です。勤務校では、4人ほどのグループに分かれ、メンバー全員が年1回ずつの公開授業を行い、メンバーの授業は必ず見学するようにしています。また、学校全体での研究授業が年3回ほどあります。担当教科が理科なので実験の準備に時間が掛かることや、生徒指導や部活動指導などもあることから、正直なところ、「研究授業どころではない」と思ってしまう時もあります。
大塚 忙しさが研究授業のハードルになっていることは、私の勤務校も同じです。2009年度に2校が統合して開校した新設校のため、今年度は特に時間の余裕がありませんでした。授業時数の増加など、新課程への対応もあります。学校全体の動きを見ながら、いかに研究授業の時間をひねり出すかは、今後ますます難しい課題になりそうです。小学校と比較して中学校で研究授業があまり盛んでない要因には、教科の壁も挙げられます。「他教科の授業を見ても参考にならない」と考える教師は相当数いるのではないでしょうか。
川合 自分の経験に照らし合わせても、同じ教科の授業を見る方が、すぐに役立つことが得られやすいのは事実です。授業スタイルが固まっていない若手教師は、まず担当教科の授業を中心に見た方が良いかもしれません。しかし、ある程度経験を積んできたら、積極的に他教科の授業を見学して、視点を変えることも必要ではないでしょうか。他教科の授業でも、自分の指導に生かせることはありますし、それを探すこと自体が授業を工夫する力になると思います。
大塚 団塊の世代が大量退職していますから、若手教師の指導力を高めることは大きな課題ですね。研究授業は、新卒採用の教師に大学や初任者研修では学べないことを指導する大切な機会です。例えば、新卒採用の教師は評価方法について学ぶ機会がほとんどありません。なるべく早い時期に、研究授業などを利用して指導すべきです。
川合 評価の仕方を正しく理解していないと、大きなミスを犯しかねません。目立つ子よりも、おとなしくて目立たない子の評価をつい低くしがちにするなど、経験が浅いと陥りやすいことは沢山あります。
大塚 ただ、研究授業が必要なのは、若手教師だけではありません。経験が豊富な分、「今の指導法で大丈夫」と考える教師がベテランほど多いようです。しかし、教職歴にかかわらず、自ら勉強する機会をつくり指導力を高めていかなければ、時代の流れに取り残されてしまいます

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