課題にフォーカス

仙台市立寺岡中学校

1983(昭和58)年開校。仙台市北西部の新興住宅地に位置する。2005年度、文部科学省のキャリア教育実践プロジェクトに指定。08年度、キャリア教育に対し文部科学大臣表彰。


■校長:藤森幸先生
■所在地:〒981-3204 宮城県仙台市泉区寺岡2-13-1
■生徒数:327人
■学級数:10学級
■TEL:022-378-0931
■URL:http://www.
sendai-c.ed.jp/‾tera-jh/

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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学校事例

「つながり」を意識した職場体験が
学習意欲の向上に結び付く

宮城県仙台市立寺岡中学校

3年間、一貫した課題を設け職業観の変化を追わせる

 仙台市立寺岡中学校は、2005年度に、市内で最も早く、2年生における5日間の職場体験を中心としたキャリア教育の取り組みを始めた。初年度は受け入れ先の確保に難航したが、試行錯誤を繰り返しながらノウハウを蓄積。5年目を迎えた09年度までに、3年間一貫・教科間連携を特色とするプログラムをつくり上げた。職場体験を「一過性のイベント」に終わらせずに実りあるキャリア教育を実践し、生徒の進路に対する目的意識と共に学習意欲が高まるという成果を上げている。
 同校のキャリア教育の目的は、「職業について知る」にとどまらず、「働くとはどういうことか、そしてその意義・目的は何かを考える」ことにある。取り組みの柱は、1年生の「職場訪問」、2年生の「農業体験」「職場体験」、3年生の「達人訪問」と3年間のまとめとなる「キャリア教育発表会」である(図1)。

図1:寺岡中学校のキャリア教育の柱
1年生
職場訪問(1日)  

働くことなどについて事前学習をした上で、3~6時間くらい仕事を体験し、働く意味について事業所でインタビュー。感じたことをまとめる

2年生
農業体験(2泊3日の野外活動)  

2日目には農業を体験。その後、民泊

職場体験  

「総合的な学習の時間」を使い、年50時間で実施(事前準備12時間、職場勤務5日間で30時間、事後学習8時間)。事業所は、教師による面接と生徒の希望を踏まえて決定。事前に事業所に履歴書を提出する。職場勤務中は自宅から直接職場に行く。体験後に発表会をして、考えや感じたことを共有する

3年生
達人訪問  

修学旅行の際、教師が選んだ訪問先に自らアポイントを取って訪問する

キャリア教育発表会  

働くことについての3年間のまとめ


取り組みの柱は各学年共通。取り組み同士のつなげ方や中身の工夫などは、各学年が生徒の実態に応じて柔軟に対応している

   特徴は、各学年の取り組みにつながりを持たせていることだ。例えば、ある学年では、「働くことの喜び/どうして働いているのか/中学校の時に身に付けておいた方が良いものは何か/仕事へのこだわりとは」という四つの質問を、3年間を通じて訪問・体験学習を行う度に投げ掛けた。1年生の時にした質問を2、3年生の時にも投げ掛けることによって、さまざまな大人の多様な考え方に触れることが出来ると同時に、3年間で変化する自分自身にも気付くことが出来る。
 「本校のキャリア教育は2年生の職場体験が中心ですが、1、3年生の取り組みとつなげることで、職場体験をより意味のあるものにしています」と藤森幸校長は話す。
 柱となる活動がある一方で、具体的な手法は各学年の学年主任に任せられている。毎年、年度初めに、学年主任を中心として、生徒の実態を踏まえた各学年の方針を検討し、共有している。例えば、前述の「3年間共通の質問」はある学年でのみ実施されたもので、別の学年では3年間を通して、働く意義について「生活のため/社会のため/自分の生きがい/義務を果たす」という四つの観点から考えた(図2)。
 

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図2:3年間のまとめとなるパネルディスカッションを終えての感想
働く意義について、3年間を通して「生活のため/社会のため/生きがいのため/義務を果たす」という4つの観点から考えてきた学年によるまとめのパネルディスカッション後のシート。司会者、パネラーを始め、参加した生徒全員が、ディスカッションを通じて自分の意見がどう変化したかを考察した

   キャリア教育の総まとめとして3年生で行うキャリア教育発表会の形式も、各学年の方針により異なる。ある学年では、3年生全体でパネルディスカッションを行い、別の年は学級内でディベートを行った。
 「すべてを固定のプログラムとせずに、教師の裁量に任せる部分を残すことで、学年の実態に応じて柔軟に対応出来る上に、先生自身のやりがいにもつながります」と藤森校長は説明する。
 「毎年、生徒の実態は変わるので、プログラムを厳密に固定してしまうのは良くありません。教師にとっても、前年度の踏襲では、それぞれの取り組みの意義が薄れていき、形骸化してしまうことがあります。教師自身が楽しく取り組めなければ、内容はなかなか深まらないでしょう。先生方の『思い』は出来るだけ尊重しています」(藤森校長)
 もっとも、毎年必ず「前年とは違うことを」とは求めていない。学年主任がそれで良いと判断すれば、前年と同じでも問題はないというスタンスである。しかし、どの先生も「より良いものを」という思いから、毎年工夫を重ねているという。
 「各学年の『思い』が、ぶれずにうまくいっているのは、年度当初に教師全員で『すべての教育活動を通して生徒に身に付けさせたい力』を一つの活動ごとに確認し、共通理解をしているからだと思います。取り組みの柱と目標を決めて、後は学年に任せるというのがポイントです」(藤森校長)


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