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今後の教育改革プログラムはこう動く

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★今後の教育改革プログラムはこう動く
梶田先生 最後に、学習指導要領の改訂の方向などについて情報をお伝えします。
 これまでの中教審が2000年で終わり、教育関係の7つの審議会が合併して2001年2月、新中教審が発足しました。合併しただけでなく、会のあり方や運営方法も変わりました。これまでは7つの審議会にそれぞれ委員がいて、いわば縦割りで、生涯学習審議会は生涯学習のことだけを考えるというようにしていたのですが、新中教審では、30人の委員が「ゆりかごから墓場まで」のあらゆる教育問題を考えることになりました。その下に分科会、部会ができていて、成員が分科会に属しますが、しかし、30人の成員はどこの分科会に聴きにいってもいい、つまりオブザーバー参加できることになった。もちろん、各分科会だけの臨時委員、専門委員もいます。
 そんななかで、第1期、2003年4月までしたことは、大きく2つ。一つは、大学の改革の問題。日本には700の4年制大学と短大が500ありますが、10年前にできた、「大学設置基準」の大綱化というプリンシプルのもとで、できるだけ規制緩和をしてきました。しかし、これが破綻し、大学はどんどんつぶれてきます。あと数年で、大学・短大の定員が18歳人口を上回るようになるからです。これからは、質を確保して、入学定員がむやみに増えていくことはやめようとしました。つまり、大きな方針転換をするわけです。これを「高等教育のグランドデザインをつくる」といいます。どんどん答申が出て、どんどん法律改正をしています。
 もう一つは、「教育基本法」を改正するという問題。これは、中教審の手を離れて、政治の舞台にのぼっています。
 第2期は2003年2月に発足しましたが、「初等・中等教育の見直し」が大きなテーマになります。
 4月から、遠山文部科学大臣から、「初等・中等教育のありかたについて、全体的に見直してほしい」という包括諮問がありました。議論がまとまったところから答申をどんどん出して、逐次法律改正やいろんなことにつなげていくはずです。
 したがって、こんどは「初等・中等教育分科会」が働く時期です。
 課題は2つで、はっきりしています。1つは、義務教育のあり方。「六・三制」の弾力化。例えば、5歳児から入学させていいんじゃないかとか、小・中学校の連携をはかるとか、小・中・高の連携をはかるなど、12年間の弾力的な扱いができないかということです。
 2つ目は、教育課程をどうするかという問題。2003年から完全実施の今の学習指導要領は、ゆとりを前提にしています。いまの文部科学省の考え方からすると、水と油。学習指導要領の改訂はこれまで10年ごとでしたが、7、8年後には改訂される。そのことは、今年の『教育科学白書』にも書いてあります。つまり、先日の教育課程部会で教科別の専門部会が発足して、すでに「総則」の専門部会は週に2度、3度の会議を重ねています。
 そのなかで総則は、現行の学習指導要領のなかでもやれそうなことについては、今年の秋、答申を出し、来年4月から行う。その他の各教科の中身に関しては、もう少し検討、2、3年中に公表・告示され、移行措置に入り、5、6年後には新学習指導要領になる。そういう段取りで進んでいます。
「総則」の専門部会が週に2度、3度会議を重ねているという理由は、少なくとも事務当局の期待が2つあるからです。1つは、「長期休業等の扱いを授業時数の確保という点から見直す」こと。抽象的な言い方ですが、簡単に言うと、夏休み冬休みを少なくして、授業時数を確保することを考えてほしいということです。
 例えば今年から始めた佐賀方式(佐賀県白石町)のように、7月に入ったら午後が暑いので午前授業にしてそれを8月まで続け、実質夏休みを少なくする。そして、これをもう少し拡大する。
 もう1点は、2学期制の実施。夏休みが長いために2学期制がうまく定着しない。夏休みを短くして、秋休みを1週間とれば、前期と後期のけじめがつく。
 こういうことを含めて、現学習指導要領では算数・理科の時間が少なすぎるというのが大方の意見なので、その授業を増やす。そのとき「授業時数も最低基準」という言い方をする。つまり、学習指導要領で基準を示してはいるが、必要なものは増やせと言っている。そして、増やしたものは夏休み冬休みでやれ、というのがひとつ。
 もう1点は、「発展学習」についてです。いま、算数・数学、理科について、「発展学習の手引き」が出ていますが、ごくわずかの提示しかありません。各教科でできるだけ早く出すようにし、内容の底上げを実質的にはかっていく。つまり、削減した内容のなかでも、大事なものは復活させる方向で考える。
 総則分科会でまとまれば、8、9月に「教育課程部会」に上がってくるので、もんで秋に答申し、それに基づいて来年4月から実施することになる。文部科学省の局長、課長が繰り返し、繰り返し話をしていますから、そういう流れになるでしょう。
 各教科の見直し、例えば(1)「総合的学習」をどうするかですが、高校ではなくなるとして、中学をどうするかの論議が起こるでしょう。
 (2)もう1点、小学校英語。総合的学習と小学校英語とは理念が違う。どのようにシステマティックに体系的なカリキュラムをつくっていくかが議論になると思います。これについては、国民会議でも中教審でも強い意見がある。「好きなようにやる」ということでなく、カリキュラムをつくって教えることになる。以前は、小学校で英語を教える先生がいないということがあったが、2001年に教職の免許法の改正があり、専科の場合、中学校・高校教諭の免許だけで小学校でも教えられることになる。つまり、中学校・高校の先生を英語の専科として、小学校に持っていくしくみができ、壁はなくなったのです。
 (3)さらに、英語の時数を生み出すために、家庭科の扱いをどうするか。音楽、図工、美術を選択制にするか、という話があります。
 (4)あと、かつて教科の中で総合をはかったもの、例えば、高校の「理科総合」「理科基礎」これが、物理・化学・生物・地学に分解されるでしょう。現学習指導要領では「理科総合」は必修になりましたが、教科書会社は、要請があって、「理科総合の時間を使って行う物理」「理科総合の時間を使って行う化学」という副読本を準備中。したがって、実施の段階で、理科総合は分解したわけです。
古川 小学校の生活科はどうなりますか?
梶田 残るだろうと思います。私は「生活科」と「総合的な学習の時間」をつなげて6年間になるだろうとみています。私は「生活科」をつくろうと結論を出した者として、それを主張しています。
 
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