■part 2■ 指導時間
短時間でもできる課題を継続的に続ける
指導の時間をどう捻出するかは、大きな悩みの一つだろう。一般的にLHRや放課後、長期休暇を利用するケースが多い。保護者会の日の午後など、空き時間を見つけて、指導に当てる高校もある。LHRなどで制限時間内に書かせる場合には、生徒の集中力が増す、制限時間を意識して書くようになるといった長所がある一方、指導の時間を取りにくいという短所もある。家でじっくり書かせる場合には、長所と短所がその反対になる。目的や状況に応じて、使い分けていきたい。
小論文指導は短期間で効果が期待できるものではない。短時間でも継続的に課題に取り組むことが重要だ。例えば、日直のように、生徒に日替わりで小論文日誌を書かせる活動を行っている高校がある。ノートの見開きの片面に新聞記事の切り抜きを貼り、片面に要約と意見を書かせる。朝、ノートを提出し、教師は評価やコメントを加えて、その日中に生徒に返す。40人クラスなら、生徒は40回に1回、担当が回ってくるというわけだ。
また、教科授業でも、記述式の課題を出したり、「なぜ」と疑問を持たせるように生徒を仕向けていきたい。小論文指導では「自分の頭で考える」「意見を論理的に表現する」ということを習慣付けていくことがキーとなる。「ものごとを考える」という作業を教科授業そのものの中に取り入れれば、小論文指導の下地にもなる。定期テストに論文形式の出題をし、考える力と論述する力の養成に力を入れている高校もある。
なお、'03年度以降は「総合的な学習の時間」の活用を考えたい。進路学習などで体験したり学んだ知識を基に、自分の考えを小論文にまとめさせるといった活動が挙げられる。
■part 3■ 指導体制
全校体制で臨み、特定の教師への負担を避ける
小論文指導の目的である、自ら課題を発見し、解決する能力、自己表現する力を身に付けるという大きな目的を達成するためには、全教師を巻き込んだ体制作りが必要である。
小論文は国語科の分野だから、進路指導の一環だからと国語教師や進路指導部に任せられ、一部の教師に負担が偏りがちだ。しかし、小論文の出題テーマは幅広く、一つのテーマが総合性を帯びていることも多い。地歴・公民科や理科はもちろん、家庭科や体育などの教科内容も小論文のテーマになり得る。例えば、家庭科なら食糧問題や環境問題といった、家庭科の授業で重視される問題がテーマとなる。
そもそも国語科以外の教師に求められる小論文指導は、担当教科の専門性に基づく内容面の指導が中心で、文章のテクニックではない。このことを理解してもらい、各教科の教師に協力を求めたい。担当教科に限らず指導できる得意分野やテーマを申告してもらってもよいだろう。
また、一つの課題が総合的で、教科の専門性を横断している場合、1人の生徒に対して、複数の教師が連携して指導することも必要になるだろう。最近の入試傾向として、英語を課題文とする小論文入試が増えている。英語科との連携は指導ポイントの一つとして欠かせない。
このように、小論文指導では教師間の協力が重要である。全教科の教師に協力を求めやすくするために、「小論文委員会」のような教科横断的な組織を作って、指導に取り組む高校が多い。「国語科が専門でないのに添削できるだろうか」という不安を抱く教師もいる。添削や評価のポイントを解説した冊子を制作したり、教師を対象とした研修会を開くなどして、不安を取り除くとよい。
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