VIEW21 2000.9  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 小論文指導

■part 4■ 指導の具体案 1・2年次
新聞や本を読む習慣を付け問題意識を育てる

 まず、生徒に「テーマに対する知識がないと文章は書けない」ことを実感させ、素材収集の重要性を認識させる。ある高校では、いきなりまとまった小論文にトライさせて、生徒にこのことを痛感させ、長期休暇に素材収集に取り組ませている。
 素材として最適なのは、新聞である。今の生徒は新聞を読むことがあまりないので、まず新聞を読む習慣を付けさせたい。例えば、新聞を読んで気になったニュースを1週間に1、2点切り抜き、記事の要約と記事に対する自分の意見をまとめるスクラップブックを1人1冊、作る。自分で記事を選ぶ作業を通じて、生徒の目を社会に向けさせ、問題意識を育てていく。
 また、できたノートをクラス内、グループ内で回し読みして意見交換をさせると、他者の考え方や文章レベルを知るよい機会にもなる。
 読書も欠かすことができない。見聞を広め、知識を得るだけでなく、優れた表現に触れることの意義も大きい。しかし、多くの教師が「今の生徒は本を読まない」と嘆くように、読書が習慣として根づいていない生徒が多いのが現状だ。
 毎朝10分間、生徒全員が本や新聞記事を読む「一斉読書」を行ったり、図書部と連携して推薦図書を課題として出して、感想文を書かせるなどして、読書を習慣付ける工夫をしたい。
 こうした作業を通して、生徒は自分なりの考えを発見し、それを育て、膨らませるようになる。小論文を書くに際しては「なぜ」と「私はこう思う」という視点は不可欠である。新聞や本を読むときは、漠然と読まずに「私だったら……」と自分に引き寄せて読むよう指導し、問題意識を持つことの大切さを伝えたい。

あらゆる機会を活かし、書く作業につなげる

 「読む」と同時に、「書く」ことを習慣付けることも大切だ。
 いろいろな体験(社会見学、ボランティア、キャンプ、合宿、大学訪問など)をさせて、その都度、感想を書かせるといった作業から入るとよい。生徒に小論文ということをあまり意識させず、自由に感想や意見を書くことに慣れさせる点で、入り口としてはふさわしいだろう。
 ほかにも、教科授業、日直日誌、講演会の感想、定期的な小論文課題など、あらゆる機会を活かして、「自分が考えたことを書く」というアクションが自然と身に付くように方向付けたい。文章量は少なくても構わない。意見をできる限り論理的に表現することを目的として書かせる。
 また、小論文の形式に捕らわれず、字数制限をせず、深く考えさせ自由に論述させてみることも、思考力や表現力を鍛える有効な取り組みである。深く考えながら書くことによって、自分の考えが自分でも予想していなかったほどに深まっていくことを経験した生徒は、書くことに対して意欲的な気持ちになるだろう。
 そうして文章を書くうちに生まれた目的意識を、体系立てた指導で論理的に展開できるようにする。特定のテーマについて、字数制限を設けて、まとまった文章を書くような課題を与えるとよい。テーマは、1年次では文理共通のもの、あるいは文理のバランスよく選び、2年次で文理分けをしたら、その系統に合ったテーマを選ぶ。入試の過去問から課題を出すのもよいだろう。

小論文指導の活動例
●朝読書
SHRを利用し、毎朝10分間読書をする。 本は生徒自身で選ぶか、課題図書を教師が決める。1冊読み終わったら感想文を書くだけでなく、面白かった本は紹介文を書き、クラスメートに推薦する。他人に紹介することで、内容理解が深化するだけでなく、推薦文を読むことで興味のなかった分野に目を向けられるだろう。
●日直日誌
週番、日直が書く日誌に、生徒自身がテーマを設定し、思ったことを書き込むスペースを設ける。定期的に書くことになるので、よい自己表現の場となる。
●決意文
1年間の目標、将来の目標など、「1年間をどのように過ごすか」を作文に書く。

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