■part 5■ 指導の具体案 3年次
志望校の出題傾向に沿った課題を出す
3年次になったら、1、2年次での活動を踏まえながら、志望校を念頭に置いた実戦タイプの課題へとシフトしていく。ただし、入試科目に小論文が課されない生徒に対しても、将来において役立つ力が小論文指導の中で身に付くことを理解させて、少なくとも3年次前半までは課題に取り組ませたい。
志望校に合わせた課題を出すためには、まず生徒自身の志望校をはっきりさせることが重要だ。小論文と一口に言っても、専門分野の内容のみを出題する大学、英語中心の論文が出る大学、長文資料の出る大学など、出題傾向がはっきりしている大学もある。過去問を利用し、生徒自身に志望校について出題傾向を調べさせる。そして、例えば、ある新聞の社説をよく取り上げる大学を志望する生徒に対しては、その新聞の社説の切り抜きをするよう指示したり、頻出出典、頻出著者については本を何冊か読むよう指示するなど、対策を講じさせたい。
志望校の決まっていない生徒や小論文が入試科目でない生徒に対しては、志望学部の出題頻度の高いテーマに沿った課題を出したり、興味・関心に沿ったテーマを生徒に選ばせるとよいだろう。
一般入試における学部系統別頻出テーマ
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経済・経営・商学・社会学部系統(総数420件)
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理・工学部系統(総数441件) |
1 |
日本の特質 |
25 |
1 |
教科と関連の深い問題 |
136 |
2 |
現代人 |
20 |
2 |
環境問題 |
30 |
3 |
環境問題 |
17 |
3 |
自然科学その他 |
23 |
4 |
経済・貿易 |
17 |
3 |
科学技術 |
23 |
5 |
高齢化社会 |
16 |
3 |
科学の方法・科学の限界 |
23 |
6 |
社会福祉・社会保障 |
12 |
6 |
科学と人間 |
14 |
7 |
人生・人間の生き方 |
9 |
7 |
自然観・自然と人間 |
13 |
8 |
異文化 |
8 |
8 |
マルチメディア・情報化社会 |
11 |
8 |
労働問題 |
8 |
8 |
21世紀・将来の社会について論じる |
11 |
10 |
自然観・自然と人間 |
7 |
10 |
社会その他 |
9 |
10 |
社会その他 |
7 |
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10 |
人権・権利・差別 |
7 |
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*VIEW21特集号「2000年度個別試験・小論文分析」より抜粋
評価傾向を分析し、入試本番に向けた指導と評価を
添削に際しては、書いた小論文だけでなく、過去問に模範解答が添付されていれば、それも提出させる。特に最近は、オール・オア・ナッシングの配点ではなく、ある程度の部分点が期待できる、「差がつく」小論文の出題が増えている。教師も指導する生徒の志望校の過去問や模範解答に目を通すことで、少しでもその大学の小論文の傾向に沿った指導ができるように心掛けたい。
また、入試対策として、定期的に小論文模試を受験させ、客観的な評価を受けることも重要だろう。
3年次から指導を始める場合には、1学期の放課後や夏休みを利用して、「短期集中小論文指導期間」を設けるとよい。これは13ページに示した「効果的な小論文指導のためのStep」を短期間で一通りやり抜くことに相当する。本格的な受験体制に入る前に、小論文の「書き出し」「論点」「主張」「まとめ」の組み立て方などを一通り指導しておきたい。
表 ● 小論文入試における評価への見解
▲…目立つ場合のみ影響 ●…大きくないが影響あり ◎…非常に重視 ○…やや重視 △…あまり重視しない -…無回答
一般後…一般入試後期日程 推…推薦入試
*ベネッセコーポレーションへの大学側の回答より抜粋
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