VIEW21 2000.9  指導変革の軌跡 群馬県立桐生南高校

ところで、公開授業の
実施を考えている高校は多いようだが、他校が実施に踏み切れない要因は何であろうか。一つには、自身の授業を見られることに慣れておらず、抵抗を感じる教師が多いことが挙げられるだろう。同校では前述した「校内授業公開週間」期間中、教師は原則的に自由に他の教師の授業を見学できる。抵抗を覚える教師はいなかったのだろうか?
 「授業を自由に見られることに違和感を覚える先生のために、非公開制度を作りました。授業を見られたくない場合は、教室のドアに『非公開』の紙を貼るというものです。ただ、半数以上の授業が非公開になってしまったら、という危惧もありました。しかし、結局、非公開にした先生は今のところいらっしゃいません。非公開の貼り紙は、言わば保険のようなものですね。どうしても抵抗感があるときは非公開にできる、と思うことで気が楽になっている面もあると思います」(野中先生)
 授業を見学した教師が、気付いたことを授業終了後アドバイスをしたり、メモに書いて渡す姿も見られたという。他の教師に自身の授業を見学され、また自分も見学することで得られるメリットの大きさを、個々の教師が感じているからこそ、非公開にする教師がいないのだろう。
 「公開授業は他の先生や保護者の方々に見られるので、無意識に通常の授業より説明が丁寧になっているかも知れません(笑)。でも、前回までの授業を受けていない他教科の先生や保護者の方にも分かってもらえるような授業を、と思えば、どうしてもいつもより説明が丁寧にならざるを得ません。それが自分の教え方や授業の進め方などを見直すよいきっかけになっています。教科内でも指導法などの話がしやすくなったなど、連携がよくなった面もあると思います。それまでは同じ教科であっても、他の教師が隣の教室でどのような授業を行っているか分かりませんでしたから。他教科の授業に関しても、指導法については参考になることが多いのです」(小暮先生)
 また、公開授業は、新課程と週5日制を見据え必要とされる授業内容の精選にも利用できると、同校では考えている。
 「現代社会では公害について、2年次の2学期初めの授業で取り上げます。日本のどの地域でどんな公害がいつ起こったのかという、基本的なことはこのとき生徒に教えますよ」
 「それなら、家庭科では食品への影響という面で公害を取り上げることがあるので、その授業は2学期半ばに行います」
 「生物でも、環境破壊という観点で公害を取り上げます。公害に関する基本知識がある上で授業を進めた方が教えやすいので、生物でも2学期以降に取り上げることにします」
 このように、お互いに違う教科の授業内容を把握すれば、教師同士が連携して、教える内容の重複をなくすことができる。また、生徒が理解しやすいよう教科間で教える順序を工夫すれば、より一層効率的に教えることができる。「公開授業はその素地作り」と高田校長は語った。

「今後は、中学生や
その保護者も対象とした取り組みにできればと考えています」(野中先生)
 中学3年生とその保護者に対しては、9月に学校説明会を開いている。しかし、普段通りの同校を見たいという要望は強いようだ。
 「本校の公開授業の開催の記事が地元の新聞に掲載されたんですが、それを見た本校を志望する中学3年生の保護者から、見学したい旨のお電話をいただきました。現在は警備上の理由もあって、参加対象を絞らせていただいています。『申し訳ありませんが、9月に学校説明会がありますので、今回はご遠慮ください』とお断りしました」(野中先生)
 中学生を対象とする場合、大きな問題が一つある。今までのように土曜日を実施日とすると、参加する中学生は授業を休まなくてはならない。
 「例えば、中学校が休みの第2あるいは第4土曜日に公開授業を行い、本校は第1あるいは第3土曜日を振り替え休日にすれば、中学生は学校を休まずに済みます。何かしらの工夫で解決できるでしょう」(野中先生)
 学校活性化委員会は発展的に解消し、現在は将来構想委員会が同校の改革の柱となっている。
 「公開授業は意義深い取り組みですが、学校改革という面から見れば、国際交流事業や学校説明会など、学校を活性化するための取り組みの一つです。どれか一つの取り組みのおかげではなく、多様な取り組みの実施が、学校の一層の活性化につながると思います」(野中先生)

まだある参考にしたい取り組み
国際交流事業
公開授業と同じく、学校活性化委員会から生まれた取り組み。現代社会の時間に、外部講師として地元に住む外国人に授業をしてもらった。今までに、母国の環境や文化、外国と日本の違いなどを話してもらう「世界みえみえ教室」や、祖国の料理を一緒に作る調理実習形式の「国際料理教室」などを実施。
保護者進路学習会
1、2学年の保護者が対象。夏休みに校外の会場で昼・夜の2回実施。桐生南高校の進路状況を説明し、全入時代が近付く大学入試の現状や、生徒が大学で何をしたいのかを考えさせる重要性など、進路を考える上での注意点を1、2年の時期から伝えている。保護者と生徒が一緒に進路を考えるために必要な基本情報を伝達。

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