VIEW21 2000.9  指導変革の軌跡 山形県立米沢興譲館高校

 6月の初旬、小論文指導委員会委員長の後藤敏之先生は、小論文校内個別指導受講を希望する生徒の申込用紙の束をめくりながら頭を悩ませていた。どの先生にどの生徒を見てもらうか、生徒を個別に指導する担当教師を、2週間ほどで振り分けなければならないからだ。
 指導を担当するのは小論文指導委員会のメンバーだ。同委員会は、国語科全員、地歴科全員の他、英語科1名、理科2名、計16名の教師で編成される組織で、委員長は3学年の国語科主任となっている。教師は6~8名ずつ生徒を受け持ち、小論文の個別指導に当たる。その振り分けは委員長に一任されている。
 しかし、生徒一人ひとりに合った担当者を決めるのは難しい。小論文対策と一口に言っても、志望大の入試で必須科目である生徒もいれば、併願する私立大の論述試験対策用にと受講する生徒もいる。医学系、看護系といった、理系の知識が課題に絡む場合、国語科や地歴科の先生よりも、理科の先生を担当にしたい。最近は、英語の課題文を出題する小論文入試も増えており、英語科の先生の振り分けも考慮する点だ。
 もう一つ考慮することは、できるだけ1、2学年でのクラス担任、あるいは教科担当、部活の顧問など、生徒とつながりのある教師を担当にすることだ。小論文指導は生徒と教師のマンツーマン体制となり、話す機会も自然と多くなる。生徒が小論文以外のことでも進路に関することを相談しやすいようにするためだ。
 申込用紙には、生徒の志望大と学部・学科、入試形態が書かれている。1枚1枚の用紙から生徒の顔を思い浮かべつつ、後藤先生は一人ひとりの担当教師を決めていった。

'00年5月22日、
3年生対象の第1回小論文ガイダンスに参加した生徒は約200名。そのうち117名が5月30日の締切日までに小論文個別指導の受講申込用紙を提出した。
 実は、今年度は例年に比べ、小論文ガイダンスの実施時期を大幅に早めた。例年、3学期の初めに担当教師を割り当て、センター試験直後から入試直前までの期間をメインに、生徒の指導に当たっていた。しかし、今年度はセンター試験の日程が1週間遅くなり、2次試験までの期間が短くなること、ここ数年、各大学で小論文の比重が高まっていることなどから、長いスパンで小論文対策を行う必要性を感じたからだ。
 「かつては3学期からでも、入試になんとか対応できました。しかし、年々、そのような付け焼き刃的な対策では不十分だと思い始めました。今年度はセンター試験と2次試験の間に十分な指導ができないと考え、小論文指導の早期開始に踏み切ったのです」(後藤先生)
 小論文模試は年に5回を予定。外部から専門の講師を招いた小論文講演を5月に開催。この小論文講演は、小論文の書き方がよく分かったと生徒に好評だったという。さらに希望する生徒には、外部の小論文講座を斡旋する。
 また、図書室の入口付近に「小論文コーナー」を設け、岩波ブックレットや講談社現代新書など、小論文指導委員会が選んだ推薦図書や、朝日新聞『天声人語』の切り抜きを常時、閲覧できるようにした。
 このように、生徒が小論文を書く機会、知識を得る機会を増やしたのだ。

写真 図書室の「小論文コーナー」
図書室の「小論文コーナー」では『イミダス』(集英社)といった現代用語事典、学問を詳解している『AERA Mook』(朝日新聞社)などを自由に閲覧できる。



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