■地歴・公民■
自ら学び自ら考える授業づくりと、大学入試とのジレンマ
地歴・公民では、主に(1)自ら学び自ら考える力の育成、(2)中学校までの学習内容の精選と各科目の扱いの変化の2点に対応することが必要になる。今回のアンケートでは、(1)に対して強く意識されていることがうかがえた。
ただし、授業改善や学習内容の精選を唱える声が多い一方で、それで入試に対応できるかという大きな壁に突き当たっているようである。
「郷土史や世界史との関連を重視し、授業内容を充実させていく。さらに、教材として新聞・雑誌などの記事を活用したい。生徒主体の学習活動を重視し、レポート作成などを計画している。ただし、授業進度・入試との関係を考えると、どこまで実現できるかは不安である」(佐賀・日本史)
「入試で求められる知識量は、今までと変わらないと思う。現場のジレンマは非常に大きい」(大分・世界史)
具体的な提案は、今回のアンケートではなされていない。
「自ら学び自ら考える力の育成」が入試にどう反映されるかは、今後の動向に注目したい。入試の多様化に従って小論文・総合問題・面接などで、課題解決力や社会に対する意識が求められてきている。つまり、地歴・公民の各科目だけの入試を睨むのではなく、生徒の「生きる力」向上のための地歴・公民を真剣に考える時期にきているのではないだろうか。これは結局、各科目を学ぶ動機付けにもつながるはずである。
また、(2)に対しても、これからの取り組みになりそうである。新学習指導要領では地理や公民では項目の扱いが大幅に変更されているが、具体的な授業の見直しについては特に強い意見は挙がらなかった。
■理 科■
課題研究を継続しつつ項目の変化に着目
今次の新学習指導要領において、探究活動・課題研究を重視する流れは継続している。「生活体験の少ない生徒に、できるだけ多くの実験を通して、科学的な現象を体験させる必要がある」(福岡・物理)と、さらなる工夫を挙げる意見もある。
しかし、多くの先生方の視点は各科目の指導項目の変化にある。「理科総合A・B」の新設や、中学校からの項目移行などによって、現行の各科目の指導内容に変化が生じるからだ。
対応策としては「中学校までの学習内容を再確認し、新たに授業計画を立案する」(青森・物理)とした上で、「授業時間数の減少は必然であるので、指導内容の削減と内容の精選を思い切って行う」(鹿児島・物理)といった意見が大勢を占めた。
「内容の精選は行う。しかし、授業内容の維持などを考えると、新課程の意図とは逆に実験にしわ寄せがいかないか不安」という意見もある。
指導の効率化については、「自作のプリントで授業を行うようになってから、授業ペースが従来の1.5~2倍程度速くなった。授業を早く終え、復習モードに切り替えて、知識の定着を図っている」(佐賀・化学)、「科目内での学習内容の精選はもちろん、長期・短期休暇中の課題を検討して、意欲的に効率よく学習させる工夫が必要だ」(岐阜・生物)との提言が寄せられた。
なお、入試での医学部生物必修の動きによって、さらに生徒に求められる履修科目及び学力に幅が生じることが加速される。生徒の志望校に合わせて学習内容を細かく提示することも、3学年では必要となるかも知れない。
「教師側の負担増大は避けられないが、生徒一人ひとりの状況に合わせた小ステップによる、学習プログラムを提示しようと考えている。スポーツ選手に各員の目標や現状に合わせた、個別のトレーニングプログラムがあるのと同じことだ。今後は生徒の学力格差が一層広がることが予想されるため、従来の集団指導と並行して、習熟度別の個人指導が必要となるだろう」(長崎・化学)
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