VIEW21 2000.10  新課程への助走
 新課程に向けた教科指導を考える

■数 学■
教科研究を行い指導内容の精選、順序の見直しを

 新教育課程での高校数学は、中学校からかなりの内容が移行されることと、各科目で扱う内容が再編されているところがポイントである。指導案を考える際、まずそれらの内容を研究することから始まるだろう。「中学校の指導内容及び高校数学各科目の内容を研究した上で、新たに指導計画を作り直す必要がある」(群馬)というように、アンケートでは教科内容の研究を実行項目として挙げる意見が多かった。
 だが、中学から多数の項目が移行するのに対し、現行の数学Ⅲレベルの内容がさほど軽減されるわけではないという問題がある。入試において、理系の生徒に求められる学力レベルは、大きく変わるとは思えない。そして、週5日制による授業時数の削減……。その現状を認識してか、アンケートでは指導内容の精選、効率化を提案する声が多く寄せられた。
 「十分な教材研究に基づいて、学習内容の精選を行うことが第一」(長崎)
 「数学Iの三角比と数学IIの三角関数を重ねて指導するなど、学習順序の熟考、学習内容の精選が必要である」(福井)
 「学習の順序に関しては、十分に考える必要がある。特に中学校から移行している内容については、十分に検討したい。移行内容は高校数学のメインから外れたものも含まれており、大学入試の動向を含めて考える必要があるだろう」(兵庫)

 また、中学校の指導内容との接続を図り、入試の変化を見据えて、生徒の到達目標を明確にすること、到達度をチェックし、知識の定着をきちんと図ることも対策として挙げられている。
 なお、いずれの課題においても教科・もしくは学校として一丸となって新たな計画の作成に当たることが重要であるといえよう。

学習内容の精選、学習順序の再考
(1)三角比と三角関数
新学習指導要領では、数学Iの三角比では0゜以上180゜以下の角を扱うことになっている。しかし、鋭角の三角比、鈍角の三角比と分けず、いきなり、0゜以上360゜以下の角に対して三角比を定義する。そして、鈍角の三角比を定義するときと同様に、単位円を使ってsinθ、cosθ、tanθを定義する。その後、この定義からθ(0゜<θ<90゜)を一つの角とする直角三角形の三角比(sinθ=(対辺/斜辺)など)を導きたい。こうすることで、数学IIの三角関数を指導するとき、三角関数の定義、相互関係、変換公式などを短時間で指導できるようになると思う。
(2)数列
Sn=(1/6)n(n+1)(2n+1) のときanを求めよという問題を例題として取り上げることによって、Snからanを求めることと、Σk2の公式を同時に指導したい。
(3)微分・積分と極限
数学IIの微分・積分を指導するときに、多少、新学習指導要領から逸脱するが、極限の計算も指導する。数学IIIの極限を指導しやすくなるだろう。(福井)

<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。