VIEW21 2000.10  指導変革の軌跡 滋賀県立膳所高校

理数系離れが
問題となる中、理科教育の充実を図ってきた同校では、多くの生徒が2年次の文理選択で理系を選択する。例年11組クラス中5から6クラスが理系クラスだという。そんな中で従来の普通科に加えて、'97年度より理数科が設置された。
 理数科でも、実験や実習を重視する姿勢は変わらない。理数科の生徒にとっての一番のイベントは、2年次3学期の「課題研究」だ。まず生徒は、自分が興味を持つテーマを提出する。次に、似たテーマを挙げた生徒を集めて3名から4名で構成される班を編成し、各班で再度テーマの絞り込みを行う。そして3学期、理科の授業時間、計8時間を「課題研究」の時間として割き、それぞれのテーマに沿った実験や観察に取り組む。生徒たちのテーマを見ると「お茶とコーヒーに含まれるカフェインの抽出」、「プロペラの形状による風力発電効率の研究」、「ズームイン! かび」、「大地の傷跡(滋賀の活断層~花折断層)」など多岐に渡っている。
 「『ズームイン! かび』では、生徒たちは培地にカビを生やすところから始めました。カビなんて簡単に発生しそうですが、実験をするのは乾燥している2月。培地のpHを調整するなど、試行錯誤を繰り返しながら実験を続けました。教師の私も知らなかったような事実が明らかになって、面白かったですよ」(芳賀先生)
 実験や観察は、割り当てられた8時間で終わらないことも多い。そんなとき生徒たちは放課後遅くまで実験室に籠もることになる。大学では深夜までの実験は日常的だ。膳所高校の生徒たちは言わばそれを先取りして体験している。
 そして3月下旬、視聴覚教室で研究成果の発表会が行われる。会には理科以外の教師も顔を出し、翌年「課題研究」に取り組むことになる理数科の1年生も参加して発表に耳を傾ける。
 「発表時には、パソコンソフトやビデオを用いるなど創意工夫が見られます。『課題研究』の趣旨とはずれますが、プレゼンテーション能力の育成という点でも『課題研究』は可能性を秘めています」(渕田先生)
 教科書の内容を丸暗記せず、自ら課題をもって実験や観察に臨み結果を検証する。そんな“足腰の強い”生徒を養おうとしている膳所高校。これからも同校は、アカデミズムや企業の第一線で活躍できる研究者や技術者を送り出し続けていくだろう。

'00年度、実習旅行行程・実習内容

まだある参考にしたい取り組み
自学自習支援システム
4年前からパソコンを活用し、生徒の自学自習に役立つ「自学自習支援システム」を導入している。校内実力テスト問題、センター試験問題、国公私立大の入試問題が、それぞれ5~10数年分データベース化されており、生徒は自分に必要な問題を教科、分野、難易度、大学名から検索し、引き出すことができる。さらに現在、英語と数学の定期テストの問題についてもデータベース化を進めている。このシステムの担当で理数科主任の音野吉俊先生によれば、これは教師間で過去の蓄積を共有化することも目的の一つとしているとのことだ。生徒が「自学自習支援システム」を利用できるのは、CAI室が開いている午後3時半から5時まで。開室時には常時10人程度の生徒がいるという。志望大の入試問題がどんな内容かを調べたり、校内実力テスト対策に活用している生徒が多いようだ。

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