VIEW21 2000.10  指導変革の軌跡 愛知県立一宮西高校

生徒の個別指導を
きめ細かく行う一方で、生徒を取り巻く受験への雰囲気作りにも気を配る。
 その一つはセンター試験の活用だ。同校ではセンター試験の全員受験を目指しており、受験率は数年前から98、99%を保っている。
 「センター試験を生徒全員が受験することで、共通の目標を作り、学年全体の緊張感を維持していこうと考えました。入試の方式が多様化する中で、センター試験を取り入れる私立大も増えてきました。私立大専願の生徒に対しても、センター試験を受験させる意義はあると思います」(伊藤先生)
 また、毎年10月中旬から日曜日の朝9時から夕方5時まで、自習する生徒のために学校を開放している。9月中旬に学校祭を開き、10月にはセンター試験出願を済ませると、3年生は本格的な受験態勢に入る。この時期から学校開放を行うことは、受験に対する雰囲気を盛り上げるのに大いに役立っている。
 さらに伊藤先生は、生徒一人ひとりの向上心、学習意欲をクラスにフィード・バックするように、生徒に働き掛ける。
 まず、生徒個々に向上心を持たせるきっかけとして、3年生の4月、クラス担任が一人平均1時間を費やして面談を行う。生徒は、将来の進路や志望校を念頭に置いて、1年間の学習方法について、教師とじっくり話し合う。これに触発され、学習態度が好転する生徒は多い。次に、その生徒たちに働きかけ、学習へ意欲的に取り組む雰囲気をクラス全体に広げていく。
 「理科が強い生徒、英語が得意な生徒、それぞれ得意分野がある生徒には、その分野で積極的にリーダーシップをとるように仕掛けていきます。例えば、その生徒に模範解答を示してもらい、分からない生徒に教えてあげるように指示するなど、意図的に受験へ向けての空気を作っていくのです」(伊藤先生)
 伊藤先生は以前、3年生を受け持ったとき、クラスで朝自習を行った。提案したのは伊藤先生だったが、クラス委員が中心となって学習内容を決め、生徒が自主的にプリントを配った。この朝の光景はセンター試験前日まで1日も休むことなく続いた。
 「朝自習にはクラスの9割の生徒が参加していました。途中、気が緩み、欠席者が目立ってきたときには、『毎朝プリントを配っているクラス委員の気持ちを考えろ』とゲキを飛ばしたんです」(伊藤先生)
 社会は個人では成り立たない。工場も会社もチームワークがよいところほど、良い成果を上げる。この法則がクラスに当てはまらないはずがない。現に、生徒同士が励まし合って朝自習を行ったこのクラスは、受験でも好結果を得られたと伊藤先生は言う。

写真 生徒との面談
面談は年3回の決まった時期だけはなく、生徒の状況に応じて、何度でも行う。志望が似ている生徒を複数集めて行うことも。「時間は短くても、タイミングを外さず、生徒と話す機会を設けるようにしています」(伊藤先生)



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