VIEW21 2000.12  今日と明日の活力をもたらす創意工夫
 学校活性のヒント 北海道旭川東高校

「進路だより」で学習意欲を刺激

 「スタディーサポート」や模試の結果は、年間100号以上発行される「進路だより」を利用して、生徒と保護者に“報告”している。
 「生徒は日曜日に登校してまで、保護者は経済的な負担をしてまでテストを受けています。結果をきちんと伝えるのは当然ですし、何より受ける意義を認識してほしいと思っています」
 「スタディーサポート」では、教科別の学習時間や学習内容を分析し、これからの学習習慣をどうしていけばいいのか、注意を促す。模試の場合は教科別・分野別の得点から弱点を分析して、具体的に何が足りないのか、何を勉強すればいいのかを指摘する。
 また、模試は「Fineシステム」の成績分析などを活用して、過年度や他校の偏差値・得点分布などと比較している。同じ環境で過ごしてきた先輩や、同年代のライバルの状況を見せることで、自分たちが今どの位置にいるのかを認識させ、生徒全体の学習意欲を刺激していくのだ。
 さらに「進路だより」では、このように蓄積したデータを利用して、難関校に合格した先輩の1年次からの成績推移や、夏休み明けや学期末といった節目の成績を紹介している。
 「本校の生徒の学力は、入学時は道内でトップクラスばかりというわけではありません。しかし、学習習慣が定着するにつれ、成績は上昇し、受験時には他のトップ校といい勝負をするまでに成長していきます。自分たちと同じような成績だった先輩たちが伸びていった過程をはっきりと数値で示すことで、生徒に自分もやればできるんだということを伝えていきたいんです」
 具体的な大学名を示すことで、道内の大学しか知らなかった生徒が、自分もそれらの大学に合格できるんだと思い始め、やがて自分の志望校になっていく。「進路だより」をスタートさせて12年。近年、道外の難関校を受験する生徒が増えているという。挑戦者が増えた分、合格率は落ちたが、それはやむを得ないと捉えている。
 「高嶺の花といって最初から諦めてしまうのではなく、頑張れば手が届くんだと思える環境になったということです。学校全体のレベルアップにもつながっていくと思います」
 センター試験後には、「Fineシステム」で再度、志望校の合格可能性を確認し、生徒が納得いく出願校決定を指導している。

保護者に詳しい情報を提供

 この他にも、卒業生の入試実績、AO入試情報、指定校制推薦入試の一覧など、適宜情報を伝えている「進路だより」。三者面談の資料として使ったり、各学年で年2~3回行われ、保護者の約8割が出席するという保護者集会で改めて配布している。
 「ただ配っただけでは読まれているかどうかも分からないですし、すぐ忘れられてしまいます。重要な情報は口頭で説明しながら、何度でも伝えていかないと。また、予備校や塾ではなく、本校を信頼してもらうためにも、保護者に積極的に働きかけていくことが大切です」
 進学率も安定し、生徒の自己実現を確実にサポートしている旭川東高校。だが、ここ数年、生徒の気質がまた変わってきていると西嶋先生は感じている。
 「今の生徒は本当に言うことをよく聞き、非常に素直なんです。でも、逆に冗談が通じない。以前なら生徒を揺さぶることができた言葉も、素直に受け止められてしまう。ですから、生徒に対する目標の示し方を考え直さなければならないかなと考えています」


写真 西嶋潤一
西嶋潤一
教職歴22年目。同校には'90年に赴任して11年目。進路指導主事。世界史担当。「生徒は磨かれていない原石。枠にはめずに、その可能性を引き出していきたいですね」

北海道旭川東高校
1903年創立。共学の普通科高校。全校生徒数は1000名。'00年度入試では、北海道大65名、東京大8名、京都大5名など、国公立大に216名が合格。私立大には早稲田大23名、慶応大12名など233名が合格。ほぼ全員が進学希望である一方、8割を超える生徒が部活動に参加。広く海外でも活躍する人材の育成を目指す。


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